「外国人労働者の医療問題」を未然に防ぐ方法

健康保険の悪用はどれだけ存在するのか

日本で働く外国人労働者の健康をどう保障するのか(写真:YakobchukOlena/PIXTA)  
外国人労働者の受け入れを拡大する改正出入国管理法が12月8日、参議院本会議で可決・成立した。外国人労働者の受け入れを巡り、健康保険の在り方をどう考えたらよいのだろうか。日本で働く外国人労働者を取り巻く医療事情に詳しい沢田貴志医師が解説する。

今回、外国人労働者受け入れを巡って、健康保険に関して問題が2つ指摘されている。1つは、外国人の場合、非常に大勢の扶養家族がいて、その医療費が負担になりかねないということ、もう1つは、健康保険が不正に使用されているのではないかということだ。

外国人の家族はそう簡単に健保に入れない

議論するうえで誤解が生じないように、まず健康保険について説明しておこう。健康保険には大別して、社会保険と国民健康保険の2つがある。

社会保険は、雇用主がその従業員に対してかける健康保険であり、その財源となる保険料は雇用主と従業員とで折半される。社会保険のうち中小企業の加入が多い「協会けんぽ」は、一部税の投入はあるが、一般的に社会保険の主要な財源は雇用主と従業員の掛け金である。

一方、国民健康保険は社会保険の対象外の人に対して自治体の窓口で加入する保険であり、雇用主からの拠出がない分の保険料に公金が充てられている。また、高齢者や持病があり、就労していない人の加入が多い。

外国人労働者の場合、企業が雇用して初めて在留資格が与えられるため、原則的に加入する健康保険は社会保険である。

このため、仮に外国人労働者に扶養家族がいて保険の利用が増えたとしても、その負担の多くは加入者と企業が負うことになる。つまり、全国民の税負担というわけではない。

そもそも、外国人労働者の平均年齢は日本の労働人口の平均より非常に若い。若い世代は統計上、健康保険の利用が少なく健康保険制度を支える側の人々である。企業にとっても負担は小さいと考えられる。

一方で、国民健康保険については、加入者の掛け金と税金で運用されているため、不適切に保険が利用されれば、その影響は納税者が受けることになる。しかし、国民健康保険は日本に住所を持つ個人が加入して掛け金を支払う義務を持つものであり、扶養家族という仕組みがない。

外国人労働者が日本に同伴している家族でも、家族滞在という在留資格を取得できなければ国民健康保険の対象にはならない。この家族滞在ビザの審査は非常に厳しく、配偶者と子ども以外は対象にならない。したがって、外国人労働者の実の親であっても3カ月を超えて滞在することは入国管理法上は許されず、国民健康保険に加入できない。

日本で働く外国人労働者の多くは、兄弟姉妹や親せきに親を託して仕送りをしている。旅行で親を日本に連れてくる場合も、会社が社会保険の扶養家族に入れている例はまれであり、日本の医療費が高いために軽症では受診しないで我慢している場合が多い。

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