「外国人労働者の医療問題」を未然に防ぐ方法 健康保険の悪用はどれだけ存在するのか
医療通訳のメリットは未払い医療費の減額だけにとどまらない、神奈川県では結核患者に占める外国人の割合が、過去5年間いずれも全国平均を下回っている。早期の受診によって病気の発生を抑えられている可能性があると、筆者は考えている。
横浜では現在、国際的に展開する日本企業が多くの外国人従業員を雇用しており、この通訳制度も活用している。また、ヨーロッパのある大企業の産業医が視察に来たときも、支社を横浜に開設するにあたり、医療通訳派遣制度の存在が大変魅力的であると語っていた。国際的企業が稼働できる都市環境づくりにも貢献しているのである。
現在、神奈川県が通訳制度に投入している資金は年間500万円程度であり、未払い医療費が大きく減少したことを考えれば、通訳体制が税の投入に十分見合う効果があったと、筆者は考えている。
外国人を受け入れるなら日本人と同等の待遇に
現在経済が好調な東アジアは、他の国でも好条件で外国人労働者を集めている。日本の雇用条件が悪ければ集まるのは言葉や技術の習熟が不十分な人の割合が増える。不適切な解雇や契約違反があっても是正がされにくくなる。そうなれば、1990年代の超過滞在外国人や近年の技能実習生のように病人や困窮する外国人が増え、社会の安定や公衆衛生が保てなくなる。
もし現在提案されているように外国人の雇用条件や健康保険の給付を日本人より低くした場合、その利益を受けるのは、実は納税者ではない。直接的に負担が軽減されるのは社会保険の掛け金をかける責任がある雇用主なのである。
もし外国人は日本人より健康保険の給付が少なくてよい、という制度にしてしまうと、経営状態の悪い企業がこぞって日本人の労働者を外国人に切り替え始め、社会には日本人より労働条件の悪い外国人労働者が多数働くことになるだろう。そうなれば、日本人の労働条件の悪化にもつながるであろう。
外国人労働者を受け入れるのであれば、つねに日本人と同等の待遇にして格差を作らないことが、社会の安定のために必須なのである。
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