外国人の医療保険悪用より対策すべき大問題

病院は外国人患者にどう対応すればいいのか

外国人を受け入れても、通訳なしでは病院はうまく機能しない(写真:maroke/PIXTA)  
外国人労働者の受け入れ拡大に向けた動きが活発化するなか、政府は健康保険法と国民健康保険法の改正も視野に入れ、1月28日召集の通常国会で議論する見通しだ。医療現場における外国人対応にはどのような課題があるのか。医療現場での外国人対応を研究してきた静岡県立大学講師の濵井妙子氏が解説する。

最近、訪日外国人観光客の急増で、治療費の未払いや言語の違いによる意思疎通の問題が病院の負担として話題になっている。訪日客が旅先で突然の病気や事故によって救急搬送されるケースでは、治療費が高額で本人の支払い能力を超えて未払いとなり、病院側の未収金となってしまうという。

この対策案として、政府は、訪日客には旅行保険の加入を促進すること、未払いの経験がある者は入国拒否すること、訪日客への対応にかかる費用は治療費に上乗せして医療機関が請求できるよう目安を示すことを検討しているという。

しかし、外国人患者は日本を訪れた外国人(インバウンド)だけではない。日本に暮らしている外国人住民(在留外国人)は日本人と同様に納税し、国民皆保険の対象者で公的医療保険に加入しなければならない義務があり、日本人と平等に医療サービスを受ける権利がある。

ほとんどの在留外国人は保険料をきちんと支払っているが、一部の在留外国人による公的医療保険の不正利用も報道されている。だが、医療費の未払いについては、在留外国人と訪日外国人では事情が異なるので分けて考える必要がある。外国人患者に安心で安全な医療サービスを提供するためにはどうすればいいのか。

外国人患者も日本人と変わらない

外国人労働者に対する医療対応は、古くて新しい問題だ。

1990年の出入国管理及び難民認定法の改正により、日系人およびその配偶者が就労に制限のない在留資格が認められ、家族での定住化が進んだ。そのため、国内の外国人在住率は増加し、外国人住民は地域の医療サービスを利用する機会が増えた。しかし、外国人患者を受け入れる診療環境は整備されていないため、外国人住民の受診抑制や健康格差の広がりが危惧されていた。

その当時、医療機関側からみた在日外国人受診に関する問題は、「医療費が高い」「医療費未払い者が多い」「医療保険未加入者が多い」「意思疎通が難しい(言葉の問題)」の4点が報告されていた。

ではここから、1つずつ問題をみていこう。まずは、医療費と医療保険未加入問題からだ。

少し古い研究にはなるが、1993年に発表された栃木県558医療機関の実態調査では、国民健康保険(以下、国保)または被用者保険の加入者は外国人患者2094人の36%にすぎなかった。

さらに、保険証を持っている場合、一般的には診療報酬点数のうち30%を自己負担し、70%を保険機関が負担する。保険証を持っていない場合は100%を自己負担する(いわゆる自費診療)。ところが、外国人で保険証を持っていない場合に200%の自己負担を請求していた病院が51病院の15%あった。

筆者らが2004年に発表した研究でも、外国人患者の医療費は日本人患者に比べて低額であり、年齢別、疾患別、受診圏をみても、患者調査による日本人の受診行動と顕著な相違はみられなかった。

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