プロ野球「FA制度」から失われた本来の意味

長野・内海の人的補償が話題を呼んだが・・・

MLB球団では、毎年オフにチームに残るのはFA年限に達していない6年未満の若い選手と、複数年契約をしている選手だけになる。あとはすべていったんはFA状態になる。

この時期、MLBのデータ専門サイトである「Baseball Reference」にはスター選手から、レギュラー未満の選手まで、数百人のFA選手のリストが並ぶ。今オフでいえば、ドジャースのマニー・マチャド、レッドソックスのクレイグ・キンブレルのようなスター選手から、控え選手まで。エンゼルスをFAになった田澤純一の名前もある。

彼らはMLBの巨大な「自由市場」に出品され、球団と個別に契約交渉をするのだ。主力級の選手は球団への移籍がすぐに決まるが、キャンプ、オープン戦が始まってもFA状態のまま移籍先が決まらない選手も多数いる。そうした選手はキャンプ招待選手になったり、マイナー契約をしたり、独立リーグや他国のプロ野球に働き口を求めることになる。もちろん引退する選手もいる。

MLBのFA制度は、シーズンオフの「大きなシャッフル」だ。FA制度があるために、各球団は毎年、球団を「一から作り直す」ことになる。そしてストーブリーグはファンの大きな関心事になるのだ。

似て非なる日本のFA制度

前述したように、NPBのFAはMLBのFAとは似て非なるものだ。日本の選手も入団から一定の年限を経れば(高校生8年、大学・社会人7年)国内FAの権利を得るが、自動的にはFAにならない。選手が「FA権の行使」を宣言しない限り、選手の保有権(独占交渉権)はこれまでと同様、現在在籍している球団にある。

このために、日本では主力級の選手で、他球団に行っても高額契約が見込まれそうな一握りの選手しかFAにはならないのが現状だ。

そこまでの実績を上げていない多くの選手は「球団への恩義」や「失職の危機」を感じるため、FA権を行使せずに球団にとどまる。また形式上FA宣言をしても、元の球団と契約を結びなおすケースも多い。

FA権の行使が限定的なために今でも球団と選手の力関係は、圧倒的に球団のほうが強いのだ。

MLBはFA制度の導入によって激変した。各チームの主力級は、年限が来れば他球団と移籍交渉するのが当たり前になった。金満球団はFA権を得た他チームの有力選手を物色し、大型契約を結ぶようになった。介在する代理人の存在がそれに拍車をかけた。これによりMLBの平均年俸は急激に上昇した。

球団経営者は、高騰する年俸に歯止めをかけるために、サラリーキャップ制度などさまざまな制約を設けようとしたが、MLB選手会はこれに激しく反発。1981年、1994年、1995年とMLB選手会はストライキを実施した。

次ページMLBのビジネスモデルを一変させたFA制度
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