プロ野球「FA制度」から失われた本来の意味

長野・内海の人的補償が話題を呼んだが・・・

実は、NPBには、FA制度導入のはるか前から、似たような制度が存在していた。

50代半ば以上の野球ファンは、漫画『巨人の星』で、国鉄スワローズの大エース金田正一が、巨人に入団するときのエピソードを覚えているのでないか。漫画では金田正一が主人公の星飛雄馬に「大リーグボール1号」の開発を促すのだが、金田は「10年選手」の権利を行使して、巨人に移籍したのだ。

「10年選手」とは、各球団で功績を残した主力選手が10年目に獲得する権利のことだ。10年以上在籍した選手の中から、コミッショナーが「10年選手」を指名した。「10年選手」は他球団に自由に移籍する権利を得る。

「10年選手」制度は1947年に始まり、14人の選手が制度を利用して移籍した。中には飯田徳治(1956年オフ、南海ホークス→国鉄スワローズ)、田宮謙次郎(1958年オフ、大阪タイガース→毎日大映オリオンズ)、青田昇(1958年オフ、大洋ホエールズ→阪急ブレーブス)、前述の金田正一のように後年野球殿堂入りする大選手も含まれていた。

しかし、この制度は1975年で廃止された。球団の反対が強かったからだ。

「10年選手制度」は、ありていに言えばチームに不満を抱くベテランや、年俸が高騰して球団で抱えきれなくなった大物が移籍するためにあった。名称こそ違うが、これは現行のNPBの「FA制度」と実質的にほとんど変わらない。球界の活性化や、選手の地位向上には何ら貢献するものではなかった。

FAは「球団選択権」を選手に返還する制度

そもそも、FA制度は、プロ野球のドラフト制度を補完する役割があると位置づけられている。

NPBやMLBのドラフト制度は、リーグ全体の戦力均衡と、新人選手獲得コストの抑制のために導入された。このために選手には「球団を選択する権利」が制限されている。このこと自体は、日米ともに多くの議論があったが、現時点では社会的了解を得ている。

しかし、選択する権利がないままプロになった選手は、一定年限、その球団でプレーをしてチームに貢献することで、今度は自由に他球団と契約する権利が発生する。これがFAだという解釈なのだ。

リーグの戦力均衡のために、入団時にいったん制限された「球団を選ぶ権利」が、その球団で一定年数活躍した選手に返還される、という解釈だ。MLBのFA制度は、まさにこの道理に従って運用されているのだ。

FA制度の導入によって、MLB、各球団は変革を余儀なくされ、経済規模も拡大し、ビジネスモデルも一変したのだ。

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