8歳児「パパの単身赴任」に本音を語った瞬間 子どもの本音を引き出す感情の研究とは何か

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「いっちゃんはパパに優しくなった気がする。それがいいことだな。いっちゃんはどう思ってる?」健也さんがいうと、いちのちゃんは満面の笑顔で健也さんに甘える。「うん、前はね。いっちゃん、パパにいじわるだった。今は抱っこする」。

驚くのは幾望くんがそれを冷静にこう分析することだ。「それはやっぱり、パパとたまに会うからじゃない? パパがいなくなってからいちのは赤ちゃんになったもんね」。

誰よりも単身赴任に反対していたのに

それだけではない、梓さんが働きながら一人で子育てをする不安や負担からイライラしているのを「ママはパパがいなくなって怒ってばかり。パパと一緒に暮らしている時は怒らなかったよ」と指摘もしたと言う。「幾望に言われて、ショックだったけどハッとして。本当にそのとおりだなあって反省して。気づかせてくれるんです」と梓さん。

研究スタイルの家族会議が好きだ、という幾望くん。パパの単身赴任を必死で乗り越えようとしていた(撮影:江連麻紀)

幾望くんは大のお父さんっ子だった。単身赴任が決まって誰よりも寂しがり、反対していたのは幾望くんだった。夫婦にとって幾望くんの気持ちはずっと気がかりだった。実は、内田家では少し前から、健也さんが住む旭川市に家族で引っ越す案が浮上していた。いちばんの理由はやはり幾望くんだった。

「来年、旭川に引っ越そうかって話をしてるよね。どうですか? みんなの今の気持ちは?」梓さんが聞くと、幾望くんはこう言ってみんなを驚かせた。

「僕、行きたくない。行きたくなくなった!」

どんな時も子どもたちの言葉に丁寧に耳を傾け、笑いにもっていく両親。温かい雰囲気が子どもの発言を育てている(撮影:江連麻紀)

理由を聞けばこうだ。2年生になって友達が2人も転校してしまった。さらに自分が転校したら学年の人数が変わって、クラス数が減るかもしれない。先生にも友達にも迷惑がかかるかも、と。

そんな理由なんだ、と驚く両親に幾望くんはこうも言った。「まあ、旭川に行ってもいいよ。それで友達がいなくてなっても大丈夫なんだ。どっちでもいいってわかったんだ」。そして幾望くんは、健也さんの赴任が決まってからの気持ちの変化をノートに絵を描いて研究して見せてくれた。

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