ディズニープリンセスが炎上しない深いワケ 「女性の描き方」がいま企業に問われている

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治部:そうそう。リケジョの印象が小保方さんで固定されているから、描き方が難しい。

潤工社CMのリケジョは、線で描いた素朴なイラストです。会社にその意図を聞いたら、「自分たちの会社がどういうものを発信したいか、打ち出したいかを話し合った結果、シンプルな線のイラストになりました」と答えていたのが印象的でしたね。

大きな会社だからいい知恵が出るわけではないんですよね。会社として何を打ち出したいのかをきちんと話し合うことが必要ではないかと。リケジョの描き方はこれでいいのか、変にエロに訴えていないか。企業の規模はどうあれ、話し合いはできると思うので、潤工社はそういう好例にはなると思います。

自分の働く会社のジェンダー表現に問題があったら

――読者の方で、自分の勤める企業のジェンダー的な打ち出し方に疑問を持ちながらも孤軍奮闘している人もいると思います。その人はどう社内で戦えばいいでしょうか?

治部:残念ながら、上司に「女性が不快に思います」「人権に配慮しましょう」といっても通じないでしょう。だからビジネスに訴えるのがいちばんいいと思いますよ。「会社として損をしますよ」と。

中川:そうそう、「炎上しますよ。企業としてずっと残りますよ」と。

治部:「このCMを出したら、せっかくのブランドが破壊されますよ」という言い方で説得するといいのかな。あとは会社の中で1人では異議を唱えづらいですが、自分が変だと思っていたら同じように思う人はほかにもいるはずなんですよ。

中川:間違いないよね。

『炎上しない企業情報発信 ジェンダーはビジネスの新教養である』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

治部:だからそういう仲間をなるべく探しておいて、陰で根回しをしておく。あとチームできちんと話し合う。偉い人の一声に流されない。

中川:男性ばかりのチームに入っている女性は、おじさんに同化してストックホルム症候群みたいにならない(※ストックホルム症候群=誘拐事件や監禁事件などの被害者が、犯人と長い時間を共にすることにより、犯人に過度の連帯感や好意的な感情を抱く現象)。

治部:男性の課長や部長も、自分のチームに女性がいるからジェンダー的に大丈夫だろうと思わないほうがいいですね。課員の女性が、ストックホルム症候群みたいなものにかかっているかもしれないから。場合によっては、自分の感覚が課員の女性より常識的である可能性もあるので、男だから女だからと見た目に惑わされないほうがいいですね。

今回は同級生の中川くんを相手に話しましたが、こういうジェンダーの話をごく普通に「どう思う?」と聞けることが大事だと思います。男性も女性もお互いけんかすることなく、フランクに制作会議の場で話し合えたら、企業の炎上表現は生まれないと思うんですよね。

横山 由希路 フリーランスライター・編集者

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よこやま ゆきじ / Yukiji Yokoyama

神奈川県生まれ。東京女子大学現代文化学部卒業。エンタメ系情報誌の編集を経て、フリーに。コラム、インタビュー原稿を中心に活動。ジャンルは、野球、介護、演劇、台湾など多岐にわたる。

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