ディズニープリンセスが炎上しない深いワケ 「女性の描き方」がいま企業に問われている

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治部:問題は、「ポリコレ棒で……」と言う人と大企業の意思決定する人たちでは、立場が決定的に違うということ。「ポリコレ棒……」の人たちも企業のお客さまかもしれない。でも、大企業で意思決定する人は、世の中の全体の流れが必ずジェンダーに配慮した方向に行くから、今どきジェンダー炎上はダメだと判断すべきなんですよね。これは経営判断やマネジメント判断の域だと思います。

炎上はビジネスにはなじまないと知ったほうがいい

――女性像の描き方で炎上知らずなのは、ディズニーのプリンセス映画です。治部さんの本にもそのことが書かれていて、ジェンダーの捉えられ方が時代とともに変わる中で、ディズニーはなぜ炎上しなかったのか、教えていただけますか?

治部れんげ(じぶ れんげ)/一橋大学卒業後、日経BP社で経済誌記者となる。2006〜2007年、ミシガン大学フルブライト客員研究員。2014年よりフリージャーナリスト。2018年、一橋大学大学院商学研究科経営学修士コース修了。日経DUAL、Yahoo!ニュース個人、東洋経済オンラインなどにダイバーシティ経営、女性のエンパワーメントについて執筆。現在、東京大学大学院情報学環客員研究員。日本政府主催の国際女性会議WAW!国内アドバイザー。そのほかの著書に『稼ぐ妻・育てる夫―夫婦の戦略的役割交換』などがある(撮影:梅谷秀司)

治部:ディズニーも一定の批判をされています。ですが、ディズニーが描く女性観の批判は、大体が『白雪姫』『シンデレラ』『眠れる森の美女』の初期3作品に集中しているんです。いちばん初めの『白雪姫』は1937年公開、『眠れる森の美女』は1959年公開。それこそ60〜80年前に描いた女性像を、ディズニーのスタンダードなプリンセスと思っている人がいまだに多い。

でも実際はディズニーのプリンセスの描き方は、“女は見た目”の『眠れる森の美女』までの時代や、プリンセスを描かない空白の30年間を経て、どんどん変化してきています。恋愛の自由意志をうたったり、非白人のプリンセスを据えたり、近年は恋愛や結婚を扱わずに、親から自立したり、気候変動から人を救ったりするわけです。

なぜそこまで変わったのかというと、空白の30年間に起きた創業者の逝去があったからです。創業一族でない人が社長になり、変わっていきました。あとディズニーは巨大な企業なので、変な描き方をしたらあらゆるところから批判を受けるという自覚が強いからだとは思います。前回話題になったサントリー「頂」の炎上CMがありましたが、もしこれがサントリーのCMではなく、小さな地ビール企業のCMだとしたら……。

中川:サンガリアだったら、問題にならなかった(笑)?

治部:わからない(笑)。でもサンガリアだったらスルーされたかもしれない……というのは、あるにはあるんですね。大企業は、良くも悪くも注目もされるので。

ディズニーの話に戻すと、世界に目を向けたときにジェンダーや子どもに対する考え方は、アメリカ、ヨーロッパ、アジアと各市場で異なります。特にイギリスはジェンダーの考え方が進んでいるので、ジェンダーバイアスを助長する広告は規制されているんです。

ディズニーは、イギリスの広告規制を先取りするような形でプリンセスのルールを10個出していて、中身を見てみると「かわいい」というような見た目に関するものはなくて、「友だちを信じましょう」など道徳的なことが書いてある。

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