高血糖と高血圧
正常な血糖値は、何も食べていない状態の空腹時血糖値が100mg/dl未満。食後の血糖値は140mg/dl未満。過去1~2カ月の平均血糖値を表すHbA1c(ヘモグロビンA1c)は、6.2%未満とされている。しかし、これまで正常値でも、年末に一気に危険領域に突入してしまう人がいるのだ。
「HbA1cは、1年を通して、12月から2月にかけて上がりやすいとの研究報告があります。その報告では、6.8%の糖尿病の人が、この時期に7.2%と糖尿病が悪化していました。体重の増加と運動不足に相関していたのです。血糖値は、膵臓の細胞から分泌されるインスリンによってコントロールされています。食べる量が増えるとインスリンの分泌量が増加するだけでなく、一気に多量の食事をしても増えます。この状態がしばらく続くと、膵臓が疲れ果てインスリン分泌も働きも弱くなる。そのため、食事の機会が増える年末年始に、2型糖尿病になってしまう人はいるのです」(辛院長)。
もうひとつ注意が必要なのは、高血圧。正常値は上が130mmhg未満、下が85mmhg。冬場は気温が低いゆえに、血管が収縮しやすく、そもそも高血圧になりやすい。そこに冬場の過ごし方が拍車をかける。
暖かい部屋で飲むアルコールの危険性
「温かい部屋の中でアルコールを飲んでいると、気づかぬうちに脱水症状を引き起こしていることがあります。水分不足で血流が悪くなっていても、自覚症状は乏しい。このとき全身に血液を巡らせるために、血圧は上昇します。冷たい外気に触れると、血管が収縮してさらに血圧を上昇させる。こってりとして塩分の多い料理を食べている人は、なおさらです。結果として、若くても高血圧を発症する人がいるだけでなく、脳卒中や心筋梗塞で突然、倒れるようなことも起こります。糖尿病も合併していれば、そのリスクはさらに高くなるのです」(同)。
年末に温かい室内で飲食を繰り返し、体重が増えると、糖尿病や高血圧のリスクが上がる。発症した場合には、自覚症状もあるそうだが、年末の過ごし方でそれも見逃されがち。
「高血糖になると、頻尿やノドの乾きなどの症状が現われますが、頻尿は飲酒によるもの、ノドの乾きは、温かくて乾燥した室内にいるからと勘違いされがちなのです。高血圧になると、めまいや立ちくらみなどが起こりますが、年末で疲れているからと思われやすい。体重が増えて、それらの症状が続く場合は、糖尿病や高血圧を疑ってみてください。医療機関で早めに受診することをお勧めします」(同)。
血圧は、測定器が自宅にない場合は、ジムなどの施設に設置されている測定器で測ることができる。量販店などの血圧測定器売り場コーナーで、「お試し」してみるのも一考だ。血糖値に関しては、医療機関を受診しないと普通の人は測定が難しい。ただし、最も簡単な体重測定で毎日の体重変動はチェックできる。2~3キログラム増えていたら危険領域だが、減量を心掛けるだけで血糖値を正常に導くことは可能。
「高血糖は、適正体重に戻すことで予防や改善ができます。年末に体重を増やさないことが大切。また、塩分を控えて、寒暖差の激しい環境に身を置くことを避けるようにしてください。料理としては、野菜も食べられて低カロリーの鍋や水炊きがお勧めですが、味付けの塩分は控えめにしましょう。1日3食を適量に。加えて、寒暖差をなくすために、着脱しやすい服装が望ましい。飲んだ後の露天風呂やサウナは、急激な血圧変動に結び付くので注意が必要です。楽しい年末年始を迎えるためにも、この時期の健康管理に注意していただきたいと思います」と、辛院長はアドバイスする。
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