「GAFAの分割案」は資本主義では当然の結論だ NHK「異色経済ドキュメント」が斬るIT4強

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――一方で、GAFAという4強の寡占状態が形成された中、資本主義の性質が変貌してしまったことも指摘する。

ギャロウェイ:資本主義にはネガティブな面もありますが、私たちが今向かっているのは独裁主義のようなものです。一握りの人々と企業が強大な権威を持った場合、それは真の資本主義とは言えません。寛容な精神、市民としての責任が伴って実現され、政府も企業が信頼できる、平等な条件で競争していることを確実なものにしたときこそ、資本主義はベストのシステムだと言えるのです。

――資本主義を変貌させてしまった4強に囲まれた生活に慣れ親しんでいる若者が、今後幸せを手に入れることは、とても困難なことのように捉えられる。しかし、ギャロウェイ教授は、本質的なものは変わらないと訴える。「幸福とは愛だ」と。

ギャロウェイ:若い人が一生懸命働き、自分と家族のためにある程度の経済的安定を築くこと、そして、夫婦が安全で経済的に安定した家族を築くのは、もちろん大切です。

でも、お金は手段であり、これで十分だということはないのです。それを理解したとき、満足と幸福を得られるのは結局、深く、意味がある人間関係が果たす役割なのです。両親、子ども、友人、同僚といかに親しく意味がある関係を築いているかが肝心です。ハーバード大の「成人発達研究」は、75年にわたり700人を追跡調査した大規模なものですが、その結果は、「幸福というのは、愛だ」、それ以外にはない、というものでした。

ギャロウェイ教授から日本へのメッセージ

――このような中、日本は、国としてどんなことに気を配ったらいいのだろうか。4強が肥大化する中、その富が、アメリカのように大学や医療機関などに還元されていることもない。

ギャロウェイ:日本の選挙で選ばれた政治家など公職にある人たちは、この問いかけをしなくてはなりません。つまり、大手のテクノロジー企業は、日本社会にいい影響をもたらしているか?という問いです。日本の企業が適正な競争をするチャンスがあるか、ということを確認しなくてはなりません。

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自由社会であるアメリカや日本で選挙をする際、選ばれた人物は、有権者の意思を代表しています。企業というのは、わずかな数の株主の意思だけを反映しています。企業が独占を享受し、経済を左右しすぎると、つねに危険な状態となります。なぜなら、彼らは政府をも左右するようになり、政府も健全な国家について長期的視点で考えることをやめてしまうからです。「権力の腐敗」はこうして起きます。経済の多くの部分が、つねに少ない役者の手に落ちた場合にこうしたよくない状況に陥ります。

悪いことに、収入格差というのは、3つの方法で修正されていきます。飢饉、戦争、そして革命です。それらは避けなければなりません。ただ、アメリカでは、緩慢なスピードで革命が起きていると思います。一握りの人に富が集中し、そこに入ることができない人々が、怒りのあまり初めて声を上げて、独裁者のような人物を指導者に選出しました。私は、アメリカは革命を始めてしまったと考えています。

(構成:津山恵子)

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