「GAFAの分割案」は資本主義では当然の結論だ NHK「異色経済ドキュメント」が斬るIT4強

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最後にアップルです。人間は、交尾の相手にとって魅力的に見えなくてはなりません。自分が交尾に値すると見せると同時に、「私は都会に住んでいて、お金もあるし、話もうまいし、才能もある」というのを伝える最も簡単な方法は、iOSを搭載したものを持っているということです。

グーグル、フェイスブック、アマゾン、アップルはすなわち、神、愛、消費、そしてセックスです。

資本主義の大原則「独占企業は分割せよ」

――しかし、これら4強には、別の顔もある。グーグルは、検索の93%のシェアを独占し、フェイスブックは民主主義を危うくするほどの影響力があり、『the four GAFA』によれば、ジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)が率いるアマゾンは、州の売上税を免れてきたと指摘している。

ギャロウェイ:4強が、何の抑制と均衡(チェック&バランス)も利かないままに、影響力を強め、巨大になってきたというのは事実で、それは、深刻な病です。

私は、4強を分割する必要があると考えます。資本主義のカギは競争であり、競争のカギは、いかなる企業も過剰なパワーを持たないということです。現在は、検索、ソーシャルメディア、eコマースの分野で1社しかない、つまり基本的に寡占の状況にあります。それを改善するのは、規制でも処罰でもなく、独禁法違反で分割することだと思います。

アメリカには、企業分割の歴史があります。1980年代には、Ma Bellと呼ばれ、長距離電話市場の80%を独占していたAT&Tを8つに分割し、それによって光ファイバー、携帯電話、データサービスといったイノベーションを開放しました。これらのイノベーションはそれまで、電話という独占ビジネスを食わないように(AT&T傘下の)ベル研究所に眠っていたのです。

フェイスブックは、広告やコンテンツを監視することを怠っていますが、もしフェイスブック、WhatsApp、メッセンジャー、インスタグラムの4社に分割されれば、そのうち1社が他社に差をつけるために、「好ましくないコンテンツが一切ないように努力しよう。悪役が、私たちのプラットフォームを武器として使うことがないようにしよう」と思うはずです。同様に、グーグルとYouTubeは分離できます。究極の解決策は、競争であり、資本主義なのです。

NHK-BS1スペシャル「欲望の資本主義2019~偽りの個人主義を越えて~」は1月3日夜9時より放送予定(写真:NHK)

――資本主義とそのカギである競争が、4強を肥大化することを止め、現在の寡占状態を改善するというギャロウェイ教授。それでは、資本主義は、私たちに何をもたらしてきたのだろう。そして、資本主義経済の中に生きる私たちにとって、何が大切なことなのだろうか。

ギャロウェイ:資本主義経済においては、裕福であるほど、よいヘルスケアが受けられ、ストレスも軽減され、寿命が延びます。選ぶパートナーの幅も広がりますし、よりよい教育を受けられれば、子どもが成功する確率も上がります。より裕福になろうというプレッシャーはつねにありますが、そうした努力は、すばらしいことです。

要は、長期的な将来に対する投資をしているか、いい学校があるか、不幸な人々へのセーフティネットはあるか、ということです。

アップルは宗教のようであり、創業者のスティーブ・ジョブズはイエス・キリストのように思われていますが、私は、人となりではなく、富で判断するのは、大きな間違いだと思います。私には2人の息子がいますが、自分たちが学んできた価値を子どもに教えていくのが、両親の責任だと思っています。

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