住宅相場をみると、シリコンバレーのワンルームの相場は約15万〜20万円。家族持ちとなると家賃30万円以上の住居でないと普通の暮らしができないため、必然的に最低ラインは800万円以上、家族がいると1500万円は必要となる。日本でいうと役員級の給与額である。いくらシェアオフィス、安いオフィスを見つけても人件費が重くのしかかり、企業の収益化を遅らせることになるのである。
私の場合、シリコンバレーで1人を雇うために1500万円の報酬と、各種保険や福利厚生の20%の上乗せが本当に重く感じられた。何人も面接したが、特に日本で稼いだ利益を投資することを考慮すると慎重にならざるをえず、なかなか踏み切ることができなかった。
シリコンバレーへの日本企業の進出数は近年過去最高の719社だそうで、いったん2000年初頭は減少したものの、ここ数年進出する日系企業は増加傾向だそうだ(JETRO「ベイエリア日系企業実態調査 2014年調査」)。一方でこの市場を開拓できているIT企業は少ないように思う。
日本のIT企業の認知度はまだまだ
IT企業の進出事例として楽天、メルカリなども聞くが、まだまだ現地で認知を獲得しているとは言えない。唯一アメリカ人にも認知されている日本のIT企業といえばソフトバンクだろうか。ウーバーへの出資やスプリントへの出資など、世界の第一線で戦っている印象を持つ。
そのほかの日本の企業をみると、シリコンバレーでAIやIoT(モノのインターネット)などのイノベーション技術や発想を学び、チャンスがあれば投資をする、という名目で多くの会社がオフィスや駐在事務所を持っている。
しかし戦略的に長期的なビジョンをもっているかというとそうとも言えなさそうだ。投資という面1つとっても、現地に長く根付いてネットワークと信頼と実績をつかんでやっとウーバーやエアビーアンドビーなどのユニコーン(時価総額10億ドル以上)に出資ができるチャンスをつかめるのだ。2~3年の間隔で駐在員が交代するという昔ながらのスタンスでは、このような機会に結び付くことは少ないのではないかと感じる。
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