たとえばある媒体に広告を打とうとする。昔であればテレビCMや雑誌など、クリエーティブな広告を作るのには専門的な広告代理店が必要だった。しかし、今はインターネット広告を中心とした時代に移行しており、シリコンバレーでは自分たちでグーグルやフェイスブックなどの広告を申し込み、自分たちで運用している。
さらにそれらの広告メディアも自動化、AI(人工知能)化などが進んでいるため、わざわざ広告代理店を使ったり、大きな意味でマーケティングコンサルティング会社などは使わないのである。
またフェイスブック規模の資金が豊富な会社だと、ホームページ制作会社を丸ごと買収することを通じて、社業に必要な機能を取り込んでいく。つまりお金で時間を買うようなこともしているのである。
ではスタートアップ企業はどうか。彼らは2~3人で事業を開始することが多い。その際、シリコンバレーの投資家から出資・支援してもらう金額は1万〜10万ドル(100万〜1000万円)が相場だろう。それを得たとしても、約6カ月分の運転資金ぐらいにしかならない。コンサルティング会社や広告代理店、そして制作会社など外部に業務委託費を払えるほどの手元資金もないのである。
またシリコンバレーの起業家は、スタンフォード大学、ハーバード大学のほか世界中のトップクラスの優秀な人間が多い。彼らからするとプロダクトのコードを書くのも、マーケティングも営業も全部自分がやったほうがうまくいくとも考えているし、コンサルティングなども必要ないと思っていると聞いたこともある。
重くのしかかる人件費
シリコンバレーでは雇用を拡大し、ビジネスを大きく拡大する際の人件費にも注意が必要だ。なぜ人件費が高いか。シリコンバレーが魅力的なITの地域であるため、サンフランシスコを中心とした狭い地域に多くの企業と人が殺到することで住宅価格が高騰していることが原因といえる。
「20代半ば」「独身」の条件でIT企業の営業スタッフを雇用しようとした際に、日本では東京でも400~600万円の間で見つけることができる。ところがシリコンバレーだと、同条件ではほぼ見つからない。その年収では生活維持がかなり困難なのである。目安としては1500万円(Hired.comのSalaryリポート)。日本と比べ約2〜3倍の給与となっているが、実際に面接などを通して言われる金額も1.5〜2.5倍という感覚である。
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