サラダ専門店が10憶ドル企業に成長した理由 米「スイートグリーン」、若年の嗜好に合致
とはいえ、「スイートグリーン」のビジネスが、開業当初からファストフードチェーンとして完璧だったわけではない。米国のビジネス専門誌『インク』の取材に答えた共同CEOの1人、ニコラス・ジャメットは、2店舗を開店した時に大きな転機が訪れたと話す。
「1店舗目が好調だったので、より人気のある街の中心部に店を出した。PRチームを雇い、告知に力を入れたにも関わらず、初日も2日目も、そして3日目もほとんど人が来なかった。すでに1カ月後に3店舗目の出店を計画していたので、非常に焦った」と当時の様子を語った。
最終的に、同社の創業者たちは、週末に大きなスピーカーとDJブースを設置し、「自分たちがかっこいい、良いと思う音楽」を大音量で店の前で流したという。音楽の力を借りて注目を集めれば、人が店に寄ってくる。そして自分たちが提供しているサラダを味見して、買ってくれるかもしれない。そんなことを想像し、一か八かやってみた行動が功を奏したという。彼らが選んだ音楽を気に入り、徐々に客が客を呼び、すぐに30~40人が行列をなす店に成長したというのだ。
この経験から、創業者たちは開業して間もない段階で「その街角、そのエリアでいかに自分たちのコミュニティーを築けるか」という明確な事業指針を確立した。そして、以来1店舗ずつ「着実に」拡大をしてきたという。
同社は、仕入れから店舗運営に至るまで各店舗で背景が異なる。そのため、農家やサプライヤーとのコミュニケーションはもとより、地元のアーティストや子どもたちとの対話を通じていかに各コミュニティーを「健康にするか」、どのように大きなインパクトを与えられるような行動が起こせるかを探り続けているという。
ミレニアル世代はヘルスコンシャス
スイートグリーンの顧客は、「ミレニアル世代」や「Z世代」の若い世代だ。米国の消費者リサーチ組織「ニールセン」が、60カ国、3万人を対象に行った2015年の「グローバルヘルス&ウェルネスリサーチ」によると、若い世代になればなるほど、健康的な食べ物を口にしたいと考える傾向があり、Z世代やミレニアル世代は、ベビーブーマーに比べて、10%以上高い割合で、「高くても健康的なものを手に入れたい」と考えているという。
現在10万人のアプリユーザーを保有し、ネットオーダーはこの1年で50%増加したというスイートグリーン。すでに事業を黒字化させた同社にとって、今回の増資をきっかけに、これまでのフードチェーンという領域を超え、「プラットフォーム」としての役目を担いたいという考えを持っているようだ。
つまり、今後はサラダに限らず、同社の持つサプライチェーンや、顧客ベースを拡張し、他のフードジャンルへの展開も視野に入れている。
「つまるところ、マクドナルドに代わって、世界的なファストフードチェーンの顔になりたい」と語るニーマン氏の言葉には、ミレニアル世代に共通する「ヘルスコンシャス」というキーワードを考えると、まんざら夢物語でもなさそうだ。
(文:寺町幸枝)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら