アマゾンが「AIラジコン大会」を開催する理由 急成長クラウド子会社「AWS」が巨大イベント

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今回のイベントでは、そんな顧客のわがままに応える新サービスが数多く飛び出した。中でも注目を集めたのが、“アマゾン秘伝のAI”である。「アマゾン・パーソナライズ」と名付けられた新サービスは、これまでアマゾンのECサイトや音楽・動画ストリーミングで使われてきたAIによる商品の推薦(レコメンデーション)システムを、クラウド経由で外販するというものだ。顧客は従量課金で使える。

「顧客企業からはつねにこう言われてきた。アマゾンが20年間、パイオニアとして培ってきたものでしょう。だからその仕組みを提供してくださいと」(ジャシーCEO)。その言葉どおり、AIのアルゴリズムはアマゾンとまったく同じだという。

独自の“おすすめAI”を簡単に開発

仕組みは同じでも、学習させる基のデータが異なるため、ほかのECサイトがアマゾンのサイトにあるものをそのまま使えるわけではない。アプリ内の閲覧・購買履歴や商品在庫、ユーザーの属性や位置情報などの蓄積されたデータを読み込ませれば、独自の推薦システムが完成する。

アマゾンがECサイトの創業からの20年間で培ってきた、秘伝のおすすめ(レコメンデーション)AIの外販を始める(記者撮影)

すでにシステムを試行導入した米ドミノ・ピザは、ユーザーの位置情報や購買習慣、値引きが購買にどう影響したか、などのデータを学習させ、スマートフォンアプリのプッシュ通知をユーザー1人ひとりに合わせて変えることができたという。

“アマゾン秘伝”という意味ではもう1つ、時系列の需要予測ができるAIサービス「フォーキャスト」も発表。ここにも小売りやサプライチェーン、サーバーの処理能力の予測のためにアマゾンが磨いてきたアルゴリズムが組み込まれている。販売などの過去データと関連づけたいデータを読み込ませるだけでよい。

AWSはここ数年、クラウド上に開発したAIアルゴリズムを有料で提供し、開発者が自社のアプリやサービスに組み込めるようにしている。特に機械学習のプログラミングができなくても使えるAIサービスの商品群を強化中。これまでに画像・動画の認識や翻訳、文字の読み上げなどのサービスを展開済みだ。

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