マイクロソフト「中国AI研究所」最高峰の実力 中国エリート学生を惹きつける魅力は何か
研究開発費は年間1兆円規模――。米マイクロソフトが1991年に本社に設立した「マイクロソフトリサーチ(MSR)」は世界最高峰のコンピューターサイエンスの研究機関だ。現在はイギリス、中国、インドに拡大し、さまざまな研究が日々行われている。
その中でも中国・北京にある「マイクロソフトリサーチアジア(MSRA)」は、AI(人工知能)研究での活躍が近年目覚ましい。MSRAは“北京のシリコンバレー”ともいわれる「中関村」地区にひときわ大きなビルを構え、アメリカ本土に次ぐ研究規模を誇る。200人以上の研究者を抱えるほか、大学・研究機関から常時300人以上の客員研究員を迎えている。その多くが近隣にある世界的名門の北京大学や清華大学の出身者だ。日本からも毎年10~15人の学生が短期のインターンシップに参加している。
1998年に開設されたMSRAは今年、20周年を迎えた。11月8日に北京市内で開催された記念式典では、マイクロソフトの古参研究者や数多くのOB、北京・清華両大学の学長も駆けつけた。
MSRAの創立メンバーで、現在マイクロソフトのすべてのAI研究を統括するハリー・シャム上級副社長は、「MSRAはコンピューターサイエンスにおける基礎研究の限界を突破するうえで、カギとなる役割を果たしてきた」と語り、MSRAの貢献を強調した。
画像認識や機械翻訳で大きな成果
MSRAが大きな注目を集めたのが、2015年のこと。世界的な画像認識AIのコンテストで、所属する研究チームが優勝した。画像に関する人間の誤認識率が5.1%なのに対し、MSRAが開発したニューラルネットワーク(脳の生理的処理を模倣したアルゴリズム)は誤認識率を3.57%まで下げたのだ。
さらに今年1月、アメリカのスタンフォード大学が開発したウィキペディアの記事に関する読解力テストにおいて、MSRAが開発したAIが人間の点数を上回った。質問と回答が完全に一致した点数が「82.650」となり、当時の最高得点をたたき出した。
その後3月には、MSRAとアメリカ本社のMSRの共同研究において、AIによる中国語ニュース記事の英語への翻訳が人間と同じ正確性に並んだことも発表。続々と成果が生まれている。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら