マイクロソフト「中国AI研究所」最高峰の実力 中国エリート学生を惹きつける魅力は何か
優秀な学生や研究者を引き込んできたMSRAだが、一方で7000人もの“卒業生”を生んでいる。200人以上は世界のトップ大学で教鞭を執り、100人以上はスタートアップを起業、そのうち5社はいわゆる「ユニコーン」(未上場で評価額が10億ドル以上)企業だ。さらに20人近くが大手テック企業の経営陣の一角を占めているという。
実際、MSRAの初代所長であるカイフ・リー氏は2005年にマイクロソフトを退社し、米グーグルに電撃移籍。同社の検索エンジンの精度向上に大きく貢献した。その後はベンチャー投資家に転じている。また、先述の画像認識コンテストで優勝した研究チームで、アルゴリズム開発を率いたカイミン・フー氏は、コンテストの翌年に米フェイスブックの研究部門に移った。
「グーグルより2年進んでいる」
一方で、中国のスタートアップコミュニティ拡大に貢献しているのも事実だ。卒業生によるスタートアップの1つ、「AirDoc(エアードック)」は、2015年に北京で設立された。マイクロソフトのクラウド上に画像認識のAIアルゴリズムを開発し、目の網膜の画像から病気を診断するシステムを作った。中国トップ20のうち15の病院に導入され、これまでに800万の網膜画像をスキャンした。
中国では糖尿病の広がりが問題視されており、1億人超の患者がいると推定されているが、そのうち3割程度しか罹患していることを知らない。エアードックのシステムでは、糖尿病の合併症である「糖尿病網膜症」を97%の確率で検知できるという。
エアードック創業者のレイ・チャンCEOは、「ヘルスケアAIの分野で実際に病院に販売されているものは少なく、これだけの画像を集め、AIに学習させた例もない。グーグルも同様の研究をしているが、われわれは2年先に進んでいる」と胸を張る。現在診断が可能なのは30の病気だが、将来的には200以上に広げたい考えだ。10以上の日本の病院からも問い合わせが来ているという。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら