クイーンの壮大な音宇宙「オペラ座の夜」 ロックを超越した「ボヘミアン・ラプソディ」

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結局、この曲を高く評価したDJが週末にヘビー・ローテーションで流し続けた結果、英国の聴衆の心をつかみます。1975年10月31日に発表、直後から英国のチャートを駆け上がり、9週連続で首位の座を独占したのです。

ちなみに、2002年にギネス・ワールド・レコーズ社が行った「英国史上最高のシングル盤は?」というアンケート調査では、ジョン・レノンの「イマジン」を抑えて1位を獲得しました。

オペラ座の夜の秘密

「ボヘミアン・ラプソディー」は特筆すべき曲です。が、『オペラ座の夜』には、このスーパーな曲を包含する壮大な音宇宙が現出しています。全12曲、44分11秒。聴きどころ満載です。

冒頭の「デス・オン・トゥー・レッグス」から、異様な雰囲気です。と、思うと、ベース奏者ジョン・ディーコンの作詞作曲による「マイ・ベスト・フレンズ」がやって来ます。ポップで明朗な佳曲です。クイーンの幅広さを見せつけます。締めは、「ボヘミアン・ラプソディー」から英国国歌へとつながります。ブライアン・メイが多重録音して生み出したギター・オーケストレーションの「ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン」です。

聴けば聴くほど、新しい発見がある音盤です。今まで聴こえなかったひそやかな音に気づくときの喜びを感じられます。そして、それらの音に込められたクイーンの面々の思いが胸を打ちます。

実は、アルバム制作時には、しばしばメンバー間で激しい言い争いやけんかがありました。皆、真剣なんです。ジョークを飛ばしながらすべてが順調で和気あいあいの時ばかりではありません。その蓄積が染み込んで音に深みが出ているのでしょう。

最後に、この音盤のタイトルについて。

ある夜、録音の途中で意見の対立からどうにもならなくなり、最低の気分になっていました。片田舎のロックフィールド・スタジオゆえに、繁華街に繰り出すこともできません。が、プロデューサーのベイカーの別荘が近場にあったので、そこで休憩となりました。たまたま、居間のビデオ・デッキに入っていたのがマルクス兄弟の映画『オペラ座の夜』だったのです。険悪な雰囲気だったのがこの喜劇で一気に場が和んだといいます。それで、この音盤のタイトルが『オペラ座の夜』に決まったのです。この展開もクイーン的です。

今週末は、ロック・ミュージックの進化を体現する音楽の絵巻『オペラ座の夜』を徹底的に聴き倒してみてくださいませ。

小栗 勘太郎 音楽愛好家

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おぐり かんたろう / Kantaro Oguri

1958年生まれ。東京外国語大学卒。米国滞在7年余。音楽愛好家。ポップ、ロック、ソウル、ジャズ、映画音楽からクラシックまで幅広く聴く。現在、 西日本新聞に「音楽プラスα」、毎日フォーラムに「歴史の中の音楽」を連載中。著書に『音楽ダイアリー SIDE A』『音楽ダイアリー SIDE B』(いずれも西日本新聞社刊)。

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