今週末に聴いていただきたい名盤は、エリック・クラプトン『CROSSROADS』です。邦題は『アンソロジー』(意味はわかりますが、何でこうなるのですかね?)。
エリック・クラプトンは、今年73歳です。大成功を収めた音楽家です。ロックやブルースに詳しくない聴き手もガッチリつかんでいます。そして、ここが重要な点ですが、今も現役です。一方、ときにビジネス・マインド先行で商売上手と感じる場面もあります。これまでやって来たことの繰り返し、と感じることもあります。
創造力は枯れたのでしょうか。 答えは誰も知りません。最晩年に最高傑作を書く芸術家もいるのですから、今後もクラプトンからは目が離せません。
そこで、ここに至るクラプトンの音楽の軌跡を俯瞰してみるのはいかがでしょうか。
『アンソロジー』は1988年に発表されました。その時点で、クラプトンは43歳、職業音楽家としてのキャリアは25年。その集大成です。クラプトン自身の責任編集でCD4枚組。全73曲、演奏時間は優に4時間を越えます。クラプトンという万華鏡の如き多彩な面を持つ音楽家の創世記を描くのに必要十分な分量です。聴きごたえ十分。豊かな週末になること請け合いです。
エリック・クラプトンという音楽家の最初の姿は、ギタリストです。それを基点として、ロックの歴史に燦然と輝くスーパー・ギタリストとして飛躍します。いくつかのバンドの離合集散を繰り返します。ビートルズとのセッションも栄光の一部です。そして、運命の女との出会い。身を焦がす恋がクラプトンの人生を苛烈に狂わせます。酒と薬に溺れる日々。クラプトンの創造中枢が極限まで研ぎ澄まされます。やがて、幾多の出会いと別離を経て疾風怒濤の日々も落ち着きます。シンガーとしての渋さと深みが増し、音楽もまた熟成していきます。
出生の秘密と孤独な少年時代
1945年月3月30日、エリック・クラプトンは、英国はロンドンの南、サリー州リプリーに誕生します。実は、ここには出世の秘密がありました。
第二次世界大戦末期、母パットは英国駐屯のカナダ空軍兵エドワード・フライヤーと恋に落ち、燃え上がり、身籠ります。ですが、父は戦争末期に妻の待つカナダに帰還してしまいます。
そして、母は16歳でクラプトンを出産。シングル・マザーなどという言葉のない時代です。保守的な英国の田舎町です。クラプトンは、母の実家に預けられて、祖母ローズを母と思って育ちます。ローズはクラプトンが学校に上がる5歳の時に真実を話します。ただし、その複雑な事情を理解できたのは9歳の頃だったとクラプトンが述懐しています。
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