クイーンの壮大な音宇宙「オペラ座の夜」 ロックを超越した「ボヘミアン・ラプソディ」

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主題部: そして、48秒。主題に入ります。マーキュリーが弾く印象的なピアノのアルペジオが曲想を決めます。依然として、伴奏はピアノのみ。母親に対して、人生への問いかけを続ける歌詞と旋律が絶妙に溶け合います。1分23秒で、ドラムとベースが入り、上質のポップ・バラードへと変貌します。ブライアン・メイのギターも伴奏に加わると、おなじみのクイーン・サウンドです。

主題の展開: そして、マーキュリーが2番の歌詞を歌い終える2分36秒から、ブライアン・メイのギター独奏が始まります。主題と同じ和音進行に乗って、歌心あふれるギターが胸をかきむしります。しかも、ソロの後半は、高速フレーズを散りばめた超絶技巧です。エリック・クラプトンと同じで、非常にうまいので難しいことをしているように聴こえないだけで、そうとう高度なことをサラッと演奏しているのです。

オペラ部: そして、ブライアンのソロ・ギターが完結する瞬間、オペラ部へ突入します。3分3秒からです。ハードで圧倒的なギター・ソロと最も効果的なコントラストを得るべくピアノだけの伴奏でオペラ部が始まります。結局、オペラの核心は声です。ここでは、オペラ歌手顔負けの合唱を作り上げます。

ドラマチックな展開は、マーキュリーの独壇場です。歌詞は、スカラムーシュ、ガリレオ等々、イタリア・オペラを想起させます。ティンパニーに模したバスドラムとフロアタムが効果絶大です。当初、マーキュリーが「ボヘミアン・ラプソディー」を構想したときには、オペラ部は30秒程度を想定していたのですが、実際には、1分以上続きます。

ハードロック部: 4分7秒からは、王道のブリティッシュ・ロックが炸裂します。エレキ・ギターの特性を最大化するフレーズが生き生きと舞います。マーキュリーの歌、メイのギター、テイラーのドラム、ディーコンのベースが一心同体となって攻めます。

連結部: もっと聴いていたいと思う間もなく、4分55秒には、次に転換するためのブリッジにさしかかります。ドラマチックに転換する楽曲では、リズムや和音が次に無理なくつながるように、目立たぬように備えます。劇的なようで、きちんとつながる音楽的な下準備になっています。

終結部: 5分27秒で、あの主題のピアノ・アルペジオに戻ります。そして、悟ったかのごとく、「すべては、どうでもいいのさ(Nothing really matter to me)」と歌い納めます。最後は、マーキュリーのピアノとブライアンのギターが非常に抑えた感じで終えます。5分47秒、ピアノとシンバルの最後の音が放たれます。その残響がしばし続き、5分55秒の楽曲が完結します。

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