まずは、職場で話してみましょう。起きたトラブルやちょっとした気持ちの浮き沈みなど、その場で話せる雰囲気があればよいですね。しかし、忙しかったり、そもそも周りの人と気軽に話すような状況にない場合もあるかと思いますが、気軽な世間話から積極的に取り入れてほしいと思います。
仕事中はちょっと難しいという方は、仕事帰りに食事や飲みに行くのもお勧めです。個人の時間を大切にする傾向に拍車がかかり、人を誘うこと自体をためらうことも多いですが、最近では、コミュニケーションの一環として「上司から食事に誘ってほしい」「同僚と飲みに行きたいがきっかけがつかめない」などの声も現場では多く聞かれます。もちろん、普段の関係性もあるので、やみくもに、誰とでもよいというわけにはいかないと思いますが……。
そして、家に帰ってから、家族にその日あったことを話すことが、実は最も有効な方法です。何も悩み相談をしなければと身構える必要はありません。「こんなことがあった」とか「それでどう思った」とか、その日を振り返る内容で十分で、それを日々繰り返すことがとても大切なのです。しかし、家族がいてもすれ違いが多かったり、1人世帯も年々増加し、電話で話すということも減っているので、この単純な日々の棚卸しが困難になっています。
SNSがリアルを超えることは決してない
これをある程度補完するのに役立つのは、ツイッターやフェイスブックなどSNSの存在ですが、文字は限定的で、話すことに比べて情報量が圧倒的に少ないので、効果は低くなります。あくまでも副次的なものであり、SNSがリアルを超えることは決してありません。いくら情報を共有しても、実際にその人と会って触れ合うこととはまったく次元の違うことです。
積極的に話す場、話す相手を探そうとしなければ、なかなか難しい現状もあると思いますが、「日々、体験した出来事を話す行為」に重要性を感じていただき、毎日でなくてもよいので、自分の思いや現状を話せる場を持っていただければと思います。それが、自分自身の気持ちの整理と安定につながります。
次にリセットですが、何も考えないで済むような(思い悩む余地のない)何かに夢中になれる時間を持つことが大切です。手軽なのは、携帯ゲームのようなものがそれに当たると思います。たとえば、ゲームをクリアしようとして集中しているときに、ほかのことを考える余地はないと思います。
この「心配事も悩みも考えない時間」がリセットの役割をします。DVDやTVドラマを観て、その世界に入り込むというのもよいですし、漫画や読書、スポーツ観戦、音楽も一時的に夢中になって、集中することができれば効果的です。その時間が終われば、嫌なことを思い出したり、不安がよぎったりすることもあると思いますが、それでも、一時的に現実の思考や感情をシャットアウトする時間が、気持ちの切り替えに役立ちます。自分が無心になれる、集中できることを取り入れてください。
また、誰ともかかわらない1人の時間もリセットの効果があり、究極のリラクセーション効果を生みます。人目を気にせず、自分だけの世界に身を置くことで、セルフケア効果や心の整理整頓効果が期待できます。誰ともつながらない時間は、心を豊かに育てる大切な時間でもあるのです。
「誰かと共に過ごし、自分の気持ちを話すこと」と、「誰ともかかわらずに1人で過ごす時間」の両方が心の健康を保つために必要です。車の両輪のように、いずれに偏ることなく、それぞれの時間を確保できるように日々の生活を見直してみてください。豊かで穏やかな気持ちの割合を増やす、一助になりますように。
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