"米中新冷戦"は「中国優勢」なのかもしれない

在北京20年のアメリカ人中国専門家に聞く

トランプ大統領と習近平主席は本当に「ディール」を交わすのだろうか(写真:Jonathan Ernst/ロイター/アフロ)
米中の首脳は歩み寄るのか? 今回はいつもと趣向を変え、今後の米中関係を読むための貴重なインタビューをお届けしたい。アーサー・R・クローバー氏は、北京在住20年というチャイナウォッチャーである。香港の金融調査会社、ギャブカル・ドラゴノミクス社の主席アナリストとして、投資家向けに中国情報を提供している。長年の中国経済ウォッチの集大成ともいうべき著書は、2018年『チャイナ・エコノミー』(白桃書房)として邦訳が刊行されている。筆者はその解説文を寄稿したご縁で、今回同氏の訪日に合わせ、日本の中国専門家である津上俊哉氏と2人で米中関係について話を聞いた。

習近平がとった「3つの戦略」

吉崎何はさておき、最近の米中関係について伺いたい。

クローバー:それではなるべく簡潔に。アメリカの政策エリートの中で変化が起きていると感じるようになったのは3~4年前からだ。伝統的な対中政策である「建設的エンゲージメント」がもはや適切ではなくなった。中国が経済的にも地政学的にもより困難な相手となり、新しいアプローチが必要となった。

この連載は競馬をこよなく愛するエコノミスト3人による持ち回り連載です(最終ページには競馬の予想が載っています)。記事の一覧はこちら

そのターニングポイントは2008年の国際金融危機だった。「アメリカモデルの市場経済よりも中央指令型の中国モデルのほうが有益なのではないか」という意識が中国国内で急速に高まった。そして2012年に習近平(国家主席)が政権に就き、2013年から3つの戦略に着手した。

第1は「中国製造2025」(Made in China 2025)だ。技術力の向上を目指す産業政策は、中国ではさほど珍しくないのだが、ロボット、半導体、AI(人工知能)といった分野に力点を置いた点がそれまでとは違っていた。他国の技術への依存を減らすために、ベンチャーファンドを利用した点が画期的だった。単に補助金を出すよりも、そのほうが皆、懸命になるからね。一説によれば、7000億~8000億ドルもの資金がテクノロジー開発に投入されたという。もっとも私の試算によればそれは誇張で、かなりの部分は地方政府のインフラ投資に回ったと思う。

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