"米中新冷戦"は「中国優勢」なのかもしれない 在北京20年のアメリカ人中国専門家に聞く

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吉崎:つまり、「トランプ」「防衛タカ派」「貿易戦士」という3つの勢力が、政権内で反中連合を形成しているということですね。私は4つ目のファクターとして、「宗教右派」も入れることができると思う。10月4日にマイク・ペンス副大統領が、ワシントンのハドソン研究所で行った対中政策演説は、信仰の自由のことをかなり言っていました。これも現政権の対中強硬姿勢の理由のひとつではないでしょうか。

アーサー・R・クローバー 氏 (左)はアメリカの「対中強硬勢力」を冷静に分析。 津上俊哉氏(右)や筆者(中)も「米中冷戦の長期化」を予想する(筆者撮影)

クローバー:確かにそれも最近のワシントンでよく聞く議論だ。今の米中関係は単なる商業的利益をめぐる対立ではなく、地政学だけでもない。価値をめぐる戦いもある。信仰の問題は確かに大きい。もっとも中国が弾圧しているイスラム教徒は、トランプ政権も決して優しくしているわけじゃないから、そこは少し皮肉な気がするけどね。

中間選挙後のG20で米中がディールを結ぶ可能性は50%

そして、ここがややこしいのだが、トランプ大統領自身はもともと信念の人ではないので、反中という信念を共有していない。だから、G20で習近平主席とディールをしようとする可能性だって50対50くらいあると言っておこう。「今の関税はそのままに留め置くけれども、新たな追加制裁は行わない」といった、「停戦協定」の可能性も含めてだけどね。

トランプさんは「タフガイ」であることを好むが、「ディールメーカー」でありたいとも思っている。中間選挙までは中国に対して「タフガイ」でありたいし、そのほうが支持者には受ける。ただし選挙後はその必要はなくなるから、今度は中国とディールができる人だと見られたい、と考えるかもしれない。

もう1つ重要なのはビジネス界の動きだ。中国で活動するアメリカ企業は約7万社。投資額は2500億ドル、年商は5000億ドルに達する。とてつもない金額だ。これらの企業が貿易戦争を懸念している。政権内ではスティーブン・ムニューシン財務長官、ラリー・クドロー経済担当大統領補佐官が味方している。彼らはトランプ大統領に対して、中国とのディールを迫るだろう。

吉崎:以前のアメリカであれば、ロバート・ゼーリック国務副長官とか、ハンク・ポールソン財務長官といった「親中派」のキーパーソンがいましたよね。今はそういう人が見当たらなくなっていませんか?

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