"米中新冷戦"は「中国優勢」なのかもしれない 在北京20年のアメリカ人中国専門家に聞く

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第2は「軍民融合体」(Military Civil Fusion)だ。「軍産複合体」(Military Industrial Complex)とはちょっと違う。中国の防衛産業は規模こそ巨大だが、国有企業ばかりなので効率が悪い。革新的でもない。利益率は低く、過剰生産体質でもある。そこで民間部門のお金を入れて国際競争力を高め、ゆくゆくは米軍に対抗できるように育てようと考えている。

そして第3が「一帯一路」(The Belt and Road)だ。この言葉が意味するところは広い。第2次世界大戦後のアメリカ戦略と比較するといいだろう。当時のアメリカの狙いは、新たな世界大戦を招くことなく、ソビエト連邦を封じ込めるということにあった。そこにはマーシャルプランとともに、ブレトンウッズ体制やGATTを構築し、加えて東アジア諸国とはいくつもの2国間協定(たとえば日米安全保障条約)も締結した。要はアメリカと貿易することが利益になるから、各国がソ連よりもアメリカを選ぶように仕向けていった。「一帯一路」もそれと同じようなことを考えている。

米国の「安保」「貿易」タカ派が協力し、中国の脅威に対抗

周知のように、中国は建国100周年となる2049年までにグローバル強国になるという目標を設定している。この間に、アメリカと武力衝突することがあってはならない。そこで中国と直接結び付くようなインフラを建設していく。アジアの国が、アメリカよりも中国を選択するようにね。

これら3つの政策が、ピッタリ重なり合ったときのことを考えてみてほしい。アメリカから見れば、中国が国際秩序へ挑戦している、アジアにおける覇権を奪おうとしていると映るだろう。そこでトランプ政権内では、安全保障と貿易のタカ派が手を組んだ。非常に強力な官僚たちのアライアンスだ。アメリカがアジアから追い出されないように、そして中国が国際的な経済秩序を変えてしまわないようにと考えている。

現政権の中で、ロバート・ライトハイザー通商代表のような人のことを私は「貿易戦士」(Trade Warriors)と呼んでいる。それからジェームズ・マティス国防長官や国防総省の官僚たちといった「防衛タカ派」(Defense Hawk)がいる。

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