深圳の「薬の自販機&遠隔診療機」が凄すぎる 中国のIT進化は伝統産業にも浸透している
いちばんの難題は、飲みにくさだ。日本の漢方薬は、粉末や錠剤が多く、水ですぐに飲める。
一方で、中国の場合、市販の中薬もあるが、それよりも、漢方医(中医)に診てもらい、個人個人の体質、症状、気候に合わせた中薬の処方箋をもらう方が好まれている。
そのために薬剤を煎じる必要がある。火加減が難しく、時間もかかり、匂いも強く、持ち歩きも不便という欠点があった。
ITサービス企業に変身した漢方薬メーカー
今回深圳で視察した「康美薬業」はこの古臭いイメージを覆す。IT技術を使い、医療資源の格差が激しい中国にとって夢のような「薬局+遠隔診療」システムを作り出したのである。康美薬業は、中国の「インターネットプラス」をうまく取り込んだ好例だ。
「インターネットプラス」というのは、2015年3月に中国・李克強首相が提出した政策で、新しいインターネット技術である「移動互聯網(モバイルインターネット)」、「雲計算(クラウドコンピューティング)」、「大数据(ビッグデータ)」、「物聯網(モノのインターネット)」などを、既存産業に結びつけることである。
「インターネット+医療」、「インターネット+物流」、「インターネット+金融」など、従来の産業の新たな発展の推進を目指すことである。それが最も伝統的とみられる中薬業界にも活用されている。
「中医に診てもらい、生薬をもらい、自宅で面倒くさい煎じること」をせず、もっと簡単に中医に診てもらいたい、もっと簡単に効果がある中薬を飲みたい、出張先にも薬が届けて欲しいといったユーザーニーズに答えようと、インターネットを駆使し、現在のITサービス企業に匹敵するほど伝統産業を発展させた。
現システムであれば、生薬の産地確認はQRコードで可能であり、煎じる中薬の処方が来たら、電子煎薬鍋で煎じる火加減、時間をコントロールする。飲みやすくするよう、錠剤化も可能になった。
康美の生薬取引所では、オンラインもオフラインも康美pay(アリペイのような電子決済)が使え、小規模生産者に康美payの融資も行われている。また、経済が未発達な地域だと薬を買うのも大変だが、患者が紙ベースの処方箋を「薬ひょうたん」でスキャンするだけで、オーダーでき、宅配の依頼もできる……。
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