年収2億円、中国人夫婦の「残念な」東京旅行

再検討すべき富裕層向け「おもてなし」の本質

銀座の街並み。写真はイメージです(撮影:今井康一)

 観光産業の成功には、富裕層誘致が不可欠である。スイスでのスキーからオーストラリアの海でダイビング、フランスのワイン生産地巡りからアメリカでの豪邸購入まで、世界中の富豪が好きなところで好きなことを満喫している。日本もインバウンドにおいて、富裕層誘致を重視すべきと感じている。

筆者はインバウンド研究を始めてから、数十人の中国富裕層にインタビューや密着取材をしてきた。年収2000万円のプチ富裕層から中国でも有数の富豪一家、土豪(成金の富豪のこと)から教養もセンスも一流のエリートまで、さまざまな方々から日本観光で感じたホンネを伺っている。

最近感じているのは、富裕層の訪日観光満足度が下がっていることだ。

それはもちろん、リピートにより新鮮味が減ったことと、情報技術の発達や中国国内市場が日本とシンクロすることにより、わざわざ日本でしか買えない/体験できないことが減ったことに原因がある。

しかし、もっと本質的な理由は、おそらく、日本が「富裕層を心からもてなそうとする気がない」ことなのかもしれない。もちろん、すばらしい個別対応ができるところもある。だが、今回、中国人富裕層の典型的な東京旅行、特に「コト消費」の代表である「食」「移動」を通して、筆者が感じた課題を提示したい。

新婚旅行気分を日本で味わった若年夫婦

先月密着取材した夫婦は、30代前半にして年収2億円の富裕層である。夫は弁護士事務所を開業後、投資ファンドを設立している。妻はモデルのような顔立ちとスタイルで、2人の子どもを育てる専業主婦だ。子どもがいなかった頃は欧米に年3~4回旅行していたが、今は子どもがいるので、近場のアジア諸国がメインになった。

中でも、日本が大好きだ。子どもをUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)とTDL(東京ディズニーランド)に連れて行けば、気楽で楽しい旅行になるし、日本には親子連れを配慮した施設も多い。子育てに疲れ、時々ラブラブな恋愛の頃に戻りたいときは、子どもを阿姨(アーイー:お手伝いさん)に預け、気軽に2人で3泊の「模擬新婚旅行」ができるのは日本である。

今までの日本での主な観光行動は、絶景のホテル/旅館に泊まり、薬局やブランドショップで新商品を買い、着物体験し、たくさんのインスタ映えする写真を撮るのがメインだった。最近の趣味は、ミシュランガイドで星を獲得したレストラン・飲食店の食べ歩きと美術展・個展の鑑賞になった。

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