「万引き家族」が中国の若者も魅了したワケ

9日間で実写邦画歴代1位の興行収入を達成

出演したリリー・フランキー(左)と城桧吏(写真:(C)2018 フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.)

第71回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールに輝いた日本映画『万引き家族』は、中国でも大人気を博した。

中国全土約6000スクリーンで公開され、8月3~11日の興行収入だけで8390万元(約13億円)。なんと公開9日間で中国で放映された歴代の実写邦画を抜き、第1位の座を取ったのだ。中国の映画レビューサイトを見ても評価が高く、レビュー数も多いことから、たくさんの人(ほとんど若者)の心をつかんだことがわかる。

万引きで足りない生活費を稼ぐ家族という日本人からみてもあまりなじみがない、むしろネガティブ要素もある映画だ。なぜ、中国人(特に若者)にこんなに受け入れられたのか。そして、映画に強く共感を示した背景とは何か、今回はそれを分析したい。

文芸青年は熱狂的なファン

この映画の興行収入にいちばん貢献していると思われる「文芸青年(略して、文青ともいう)」の実像を見てみよう。

万引き家族は第71回カンヌ国際映画祭「コンペティション部門」にて日本人として21年ぶりの最高賞パルムドールを受賞(写真:(C)2018 フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.)

以前の記事にも書いたが、「文芸青年」というのは、「自分に芸術の品格がある」と思わせたい若者である。

シンプル、または個性的なファッションを好み、おしゃれな書店やカフェによく出かけ、マス(一般大衆)にあまり知られていないアーティストの映画や個展に行く。

WeChat(ウィーチャット:中国版チャットアプリ)の「朋友圏(SNSのタイムラインに相当)」やレビューサイトに、行ったことの自慢と長い感想を書き込むのが一般的である。

「今日は奈良美智(日本の著名美術作家)の展覧会に行ってきました。知っている人は多いけれど、(私みたいに)わかる人は少ないだろう」「中欧の映画が大好き。でも見る人が少なすぎて話が合う人がいなくて寂しい」「友達にもらったブルーボトルコーヒー。スターバックスよりも、こっちのほうが本物だ」などなど、自分はいかにほかの人と違い、文学、芸術、コーヒーにこだわるかをアピールしようとしているのだ。

自分のセンスを表す写真も不可欠であり、インスタグラムの投稿写真のようにフィルターをたくさんかけたり、わざわざ写真の余白をたくさん残したり、モノクロに修正したりする。

また、ディテールに執着し、ひとくち食べたケーキ、自分の靴下、横顔のピアス……。つまり、中国マスの美意識である「盛り感(画面にたくさんの内容を盛り込む)」「鮮やかなカラフル」を拒絶し、自分ならではのセンスを主張しようとしているともいえる。

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