「万引き家族」が中国の若者も魅了したワケ 9日間で実写邦画歴代1位の興行収入を達成
では、『万引き家族』はどこが評価されているのだろうか。是枝裕和監督の作品が中国の若い文芸青年に最も評価されているのは、「淡泊なタッチ、控えめの表現、だからこそほんわりとした温かみと感動を長く心で味わえる」ことだ。それを『万引き家族』は完璧に具現化し、社会問題まで取り上げていた。
今回の映画のストーリーについて、日本では、万引きが国際社会にネガティブな印象を与えるのではないか、このようなことは本当に現実にあるのか、などと批判的な意見も散見される。
とはいえ、中国人の若者たちが、こういった「疎外された」人々の物語で日本をネガティブに考えることはまったくないと言える。
むしろ、こういった決して健全ではない環境の中で、輝いている人間性に感動し、自然な演技を絶賛し、そして誰でも抱く社会・家族・将来への不安に強く共感しているのである。
完璧ではないからこそ、どこかで、ニュースで見た事件、身近な知人、あるいは自分のことと重ねる。そして、その中から密やかな愛情に強く心が打たれる。
日本という国がどうかというより、ストーリー自体に感動し、淡々としながらも暖かい家族愛のメッセージを受け取ったのだろう。
中国版ポスターも話題に
さらに中国で宣伝用に作成されたポスターは、中国内外のファンに非常に好評である。
一枚は花火のシーンをベースにしたポスターであり、悲しいストーリーだと思えないほど、にぎやかで温かいのである。ポスターを作成したデザイナーが中国人視聴者の心をつかむにはこの「温かみ」だととらえたのだろう。
『万引き家族』の中国での大盛況は、たまたまのヒットではない。基盤である文芸青年という大衆の支持、是枝監督が数年前から人気を博していたこと、カンヌ国際映画祭でのパルムドール受賞、中国国内での正式上映。4つの要素の相乗効果で大成功したといえる。
今回の映画だけではない。
日本の商品もサービスもほかのコンテンツも、『万引き家族』のような、中国人若者に響く内容がたくさんある。中国国内の社会環境が激変しているなか、彼らの心を把握し、ブランディングしていけば、最終の成果物はきっと彼らを魅了するだろう。『万引き家族』は、その1つのいい事例なのだ。
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