「万引き家族」が中国の若者も魅了したワケ 9日間で実写邦画歴代1位の興行収入を達成
是枝裕和監督は、中国の文芸青年の間では、小津安二郎監督と似ていると言われ、数年前からすでに人気だった。
また、台湾の侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督を師として仰ぐという情報もあり、とても親近感を抱いている。
侯孝賢監督は80年代の『恋恋風塵』、2000年代の『百年恋歌』等、台湾を舞台とし、家族や人々の心を繊細に描写した名監督として中国の映画ファンに熱狂的に支持されている。
日本の情報にまだ十分でなく、台湾、香港、欧米からの情報のほうが多かった時代から、是枝裕和監督は中国での知名度が高かった。『誰も知らない』『そして父になる』はすでに人気を博したが、最近の是枝裕和ブームといえば、『海街ダイアリー』だった。
文芸青年たちが共感できるワケ
鎌倉で暮らす個性それぞれの三姉妹、腹違いの妹と、それぞれの人生と葛藤があるが、新しい家族として生きていく。鎌倉のきれいな風景、日本人の普通の日常生活、家族・姉妹としての絆、食堂のお母さんとのつながり、是枝監督が得意な家族をテーマにして、完璧ではない人々を洗練したタッチで描写し、日本の風情を淡々と伝えている。
このような、一見違う国のことだが、実は中国の文芸青年達にとても共感できる作品だ。自分も葛藤している十数歳も年下の兄弟(二人っ子政策の後、中高年の夫婦がとても子どもを欲しがっている)との関係、何も進んでいない自分と恋愛、バラバラになったが結局家族だけは私のことを受け入れてくれる温かみ……。『海街ダイアリー』は、自分と同じような普通の人の喜怒哀楽や家族との葛藤を描写した作品として愛されているのだ。
もちろん、起用された女優4人(綾瀬はるか・長澤まさみ・夏帆・広瀬すず)は中国の文芸青年の間でそこそこ有名であったのも一因だ。その後から、映画のワンシーンである梅酒作りが彼らの間で人気になった。
透明な瓶に氷砂糖と梅、酒を入れた写真を撮り、「海街ダイアリーなう」「梅。酒。暮。ら。し。」「my little time」のような文章を入れて投稿するのがまた「小衆」たちの新しい趣味と自慢ポイントだった。こうした数年前から自発的に育ってきたファンが今回の大人気を牽引したキー層だと分析できる。
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