介護のマッチング・プラットフォームとは? ブティックス社長ロングインタビュー

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新村:いくつか理由がありますが、ひとつは介護報酬の引き下げにより、経営環境が悪化していること。それと人材難ですね。人の採用が厳しいです。大手ならば複数の事業所の分もまとめて一度に募集広告を出すことができ、事業所単位のコスト負担は低く抑えられますが、小規模事業者が単独で募集をしようとすると、コストが割高になって、なかなか広告も出せません。知名度も低いので、採用で本当に困っています。

村上:マクロトレンドから生まれてきたニーズということですね。

新村:そうですね。業界全体で二極化がどんどん進んでいます。従来のM&A仲介会社は、最低手数料2000万円からというのが一般的です。銀行や証券会社の場合、最低手数料4000万円とも聞いています。

売り上げ規模が年間数千万円程度、しかも赤字、譲渡しても数百万円になるかどうか、といった条件の会社は、廃業するしかなかったんですね。経営難で困った時は、顧問税理士に相談したり、知り合いに相談したりして、運が良ければ引き取ってもらえることもありますが、なかなか上手くいかずに廃業してしまうケースが多いのが実情です。

廃業すると、施設の入居者はもちろん従業員も困るわけです。買収されて経営が安定すれば、安定的に給料も貰えるし、何より入居者が安心して生活できます。これは非常に意義があるしニーズもあるので始めてみようと考えました。最低手数料100万円からです。これは業界でも異例の価格設定でした。

M&Aのニーズが蓄積されてデータベースを構築

展示会に来場される方の多くは決裁権限者なんですね。経営者自らが取引交渉をされることも多く、展示会に来場される経営者層の方々にアプローチすれば、M&Aのニーズがいち早く入手できるわけです。つまり展示会を開催するごとに、M&Aのニーズが蓄積されていき、データベースが構築されていくわけです。

今、手を上げていただいているM&Aの買い手候補は3000社ほどあります。当社の場合、買い手候補が多数いるため、買い手のリサーチにかかる時間が短く、お問合せから成約までの期間が圧倒的に短いのが特徴です。通常、M&Aでは、お問合せから譲渡まで半年から1年かかるといわれていますが、当社の場合、短いものだと、ひと月半から長くて半年ぐらいです。

(ブティックス「成長可能性に関する説明資料」より)

村上:介護事業者の廃業率が高いことを考えると手数料が10分の1だとしても、数をこなせれば十分ビジネスになるわけですね。取り扱い件数を10倍獲得できる見込みがあると気付かれた点がお見事ですね。

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