介護とは、実家とわが家の「外交問題」である

「うまくやってよ」ではなく戦略を考えよ

「うまくやってよ」の「うまくの限度」は、お嫁さんが抱えるいちばんの問題です(撮影:風間仁一郎)
義父の介護体験に基づいた小説『私が誰かわかりますか』を発表した作家・谷川直子さん。小説では、地方の村社会に面食らう桃子、義理の両親に家政婦同然に扱われる静子、仕事と育児と介護の三重苦の瞳など、介護に翻弄される「長男の嫁」を緩やかな関係性でつなげながらショーケース的に紹介した。
今回は、前回記事(あなたの妻が対峙する「世間体」の意外な正体)で出てきた「介護は1日を組織化する作業で、高度なマネジメント」という著者の発言に着目し、「実家ではない家の介護をマネジメント」する方法を考える。

介護はされる側の人生の集大成

――小説では、介護にそれぞれ違ったかかわり方をする「長男の嫁」がたくさん出てきました。どの家をとっても、同じ介護は1つとてありません。自分の実家ではない家の介護をするにあたって、いちばん初めに考えなくてはいけないことを教えてください。

介護は、お世話をされる人間の生き様や考え方に大きく影響されます。私の義理の父は事故で片足を切断しているのですが、義足で人並みの仕事をしていました。義父が頑張り屋であることを皆は知っているので、最期まできちんと見届けようという気持ちは1つだったんですね。もし義父が人をあごで使うような人だったら、面倒を見る気になったかどうか。介護される段階で、その人の集約された人生があらわになります。

介護をする際、取るべき選択肢は3つあります。介護のプロに任せるのが1つ。2つ目は、旦那さんがお嫁さんに任せる。3つ目は、旦那さんが自分でする。でもケアをされる親がいちばん何を望んでいたかがわかるのは、結局のところ、実の子なんですよ。これは嫁の立場ではわからない。

娘さんがバリバリ働くことを誇りに思っているお母さんなら、娘が仕事をやめて介護をするのは、お母さんにとってストレスですよね。「お母さん、来られるときしか来られないけど、一生懸命働いているから安心して」と娘さんが言ってあげることが、もしかすると介護に匹敵することかもしれない。「いざとなったらウチの子がいるから」と思うお父さんなら、やっぱり息子に看てもらいたいかもしれない。そこは他人ではわからない。介護は人と人とが向き合う作業なので、実子が親について深く考えることが介護における第一歩なのかなと思いますね。

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