「独居認知症」あなたが知らない強烈な現実 本人や周囲が用意できることはあるのか
今年3月、私が勤務する神奈川県横浜市の薬局に、80代男性の泉田武さん(仮名)がホームヘルパーに付き添われてやってきた。聞けば泉田さんは認知症を患いながらも一人暮らしをしているという。2人の会話を耳にした私は驚いてしまった。
「泉田さん、この前、お部屋がうんちとゴミだらけで掃除大変だったわよね?」(ホームヘルパー)
「そうだったっけ?」(泉田さん)
泉田さんは機嫌よくニコニコと笑っていた。汚物まみれになっていた自分の部屋、それもつい最近起こったことを、もう覚えていないらしい。
認知症当事者が一人暮らしだったら
認知症は脳の細胞が何らかの原因で死んでしまったり、働きが悪くなったりすることで「判断力」「記憶力」「実行力」「計画力」などに障害が起こった状態を言う。認知症当事者の「朝ご飯はまだ?」という問いに対して、介護者が「さっき食べたでしょう」と返すやり取りが典型例だ。それが一人暮らしだったらいったいどうなるのか。
神奈川県川崎市で古着を扱う会社を経営していた80代の三浦誠さん(仮名)は、リタイア後も毎月大量の古着を取り寄せてしまう。2階建ての一軒家はゴミを捨てるときのビニール袋に入った大量の古着が天井近くまで山のように積まれていて、窓を塞いで昼でも薄暗い。天井裏にはハクビシンが住み着いており、衛生的とは言えない環境だ。現在、30~50代の働き盛りにとっても、離れて暮らす自分の親にもかかわる問題となるかもしれない。
自宅の1階、2階ともに古着でいっぱいになると、三浦さんはなんと次の不動産を買い求めた。そこもいっぱいになると、次の物件を買う。
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