あなたの妻が対峙する「世間体」の意外な正体 介護の局面で、関心の薄さが露わになる
小説を書いたら気づいた、嫁を悩ませる「世間体の正体」
――谷川さんが義理のお父さんを介護する際に頭を悩ませた「世間体」とは、具体的にどういったものですか?
「世間体」について考えるようになったのは、夫から「長男の嫁だから」と言われたことでした。長年東京で暮らしていて、再婚して九州の離島に嫁ぎました。でも子どもがいなかったため、長男の嫁としての実家、親戚筋の付き合いを夫から大目に見てもらっていたのです。これは小説にも書いていますが、目が悪くなった義理の母が、認知症の義父の介護を自宅でできなくなったときに、「長男の嫁だから」ということで、私がグループホーム入所後の義父を引き受けることになりました。
――都会の夫婦関係では、なかなか要求されない「嫁」の役割を突然突きつけられたのですね。
嫁という立場が本当に微妙なのは、自分の意見をどこまで言っていいかがよくわからないことです。おむつをするしないの選択1つとっても、お嫁さんが義理の親に対して、どこまで意見をしていいのか。私は長崎の五島に住んでいますが、おそらく東京に住むお嫁さんも悩みは同じだと思います。どこまでお世話をしたら親戚や周りの人に認められるのか。「世間の相場」がわからないまま、お嫁さんは心をモヤモヤさせながら面倒を見る。ルポルタージュでは書ききれない心の葛藤を小説ならば書けると思いました。
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