あなたの妻が対峙する「世間体」の意外な正体

介護の局面で、関心の薄さが露わになる

「お嫁さん」たちのモヤモヤの正体とは?(撮影:風間仁一郎)
高齢化が加速する日本で、認知症は随分と身近な病になった。自分の両親や義理の父母が認知症になるかもしれないという不安を感じる人も少なくないだろう。
しかし、実際に介護となると、夫は自分の両親の面倒を妻に任せてしまうことが多い。なかでも立場上、介護を断りにくいのが「長男の嫁」。いったいどんな心境でお世話を引き受けているのか。
作家の谷川直子さんは、再婚を機に東京から地方に移住。義父の介護をする際に、「長男の嫁」を取り巻く「世間体」の問題にぶつかった。自らの実体験に基づいた介護小説『私が誰かわかりますか』を刊行した谷川さんに話を聞いた。

小説を書いたら気づいた、嫁を悩ませる「世間体の正体」

――谷川さんが義理のお父さんを介護する際に頭を悩ませた「世間体」とは、具体的にどういったものですか?

「世間体」について考えるようになったのは、夫から「長男の嫁だから」と言われたことでした。長年東京で暮らしていて、再婚して九州の離島に嫁ぎました。でも子どもがいなかったため、長男の嫁としての実家、親戚筋の付き合いを夫から大目に見てもらっていたのです。これは小説にも書いていますが、目が悪くなった義理の母が、認知症の義父の介護を自宅でできなくなったときに、「長男の嫁だから」ということで、私がグループホーム入所後の義父を引き受けることになりました。

――都会の夫婦関係では、なかなか要求されない「嫁」の役割を突然突きつけられたのですね。

嫁という立場が本当に微妙なのは、自分の意見をどこまで言っていいかがよくわからないことです。おむつをするしないの選択1つとっても、お嫁さんが義理の親に対して、どこまで意見をしていいのか。私は長崎の五島に住んでいますが、おそらく東京に住むお嫁さんも悩みは同じだと思います。どこまでお世話をしたら親戚や周りの人に認められるのか。「世間の相場」がわからないまま、お嫁さんは心をモヤモヤさせながら面倒を見る。ルポルタージュでは書ききれない心の葛藤を小説ならば書けると思いました。

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