あなたの妻が対峙する「世間体」の意外な正体 介護の局面で、関心の薄さが露わになる

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――ゲームがうまくいかないと、リセットする感覚ですね。

そうですね。リセット感覚があるから、根本的にお嫁さんの「世間体」問題が解決しないのかもしれません。でも介護は、男性が頭のスイッチを切ったとしても24時間体制で続いていきますし、途中で放り出すことがかなり難しいです。一度かかわってしまうと、戻れない登山と一緒でどんどんハードになっていく。

介護は、それまでの自分の人生で蓄積された知見を総動員します。毎日自分なりに介護の入った1日を組織化していく作業なので、本当に男性が途中から参加するのは大変だと思います。

――しかも介護をされる側の身体情報が毎日アップデートされていきます。

多分、男の人は介護を「ご飯を作ってあげる」程度のことだと思っているはずです。でも介護はそうじゃない。特に認知症の介護は、すべて混乱した状態の人間を受け入れることです。決して、家事の延長線上に介護があるわけではない。でも、私は家事の延長線上に介護をプラスしてしまう女性の態度も良くないと思うんです。

これからの「世間体」をつくるのは私たちの責任だ

――家事の中に介護を組み入れてしまうお嫁さんの態度も良くないですか。

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はじめは、「ちょっとやることが増えるくらいは、なんてことないか」という気持ちで始めると思うんです。ところが介護は頭を使うし、高度なマネジメントをするから大変で。1カ月も経てば、旦那さんと奥さんでは持っている情報にかなり差ができてしまいます。そこで「じゃあ、俺は何をやればいいの?」と言われると、お嫁さんは頭にカーッと血が昇ってしまうわけですよね。

最初の段階から旦那さんも介護に協力してもらえれば、夫婦間の心の隔たりや情報格差は起きないと思います。でも女性は「いいわ、家事の合間にやるから」といった感じで引き受けてしまって、なかなか夫婦の協力体制に持っていけない。

今後は男性も女性も関係なく、介護は最初の段階からみんなで看る体制を「社会が世間体として持っていれば」いいのではないかと思います。その世間体をつくることは、介護を体験した私たちの仕事だと思うんですよね。女性もただ引き受けるのではなく、介護は大変なんだということを言っていかなくてはいけないのではないでしょうか。

――今、介護の協力体制に持っていけないご夫婦はどうしたらよいでしょう。

特に認知症だと、どんなに義理のご両親を看ても、お世話をしてもらう本人は忘れてしまうし、お礼の言葉も言われませんよね。もし男性が介護に踏み込める場があるとするならば、奥さんに対して「何かできることはない?」という思いやりの一言をかけることですね。たとえ何もできなかったとしても。それは夫婦間だけでなく、お友達同士でも。

(この記事の後編は10月13日に公開予定です)

横山 由希路 フリーランスライター・編集者

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よこやま ゆきじ / Yukiji Yokoyama

神奈川県生まれ。東京女子大学現代文化学部卒業。エンタメ系情報誌の編集を経て、フリーに。コラム、インタビュー原稿を中心に活動。ジャンルは、野球、介護、演劇、台湾など多岐にわたる。

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