やがて破綻を招く会話パターンに気づくコツ イメージを共有できれば「行き違い」は防げる

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さらに、普段のやり取りに慣れてしまっていると、そもそも省略するという癖がついてしまっている場合もあります。

たとえば、「お母さん、お茶」と、お母さんにお茶を入れてほしいという意味合いでよく使われるのではと思いますが、「お母さん、お茶入れて(ください)」を省略したものですよね。それでわかるのだから問題ないという感覚が、特に身近な関係だとありがちです。家族はもとより、同じ部署の人間や親しい友人などでも起こりえます。もちろんこれらのやり取りが絶対にダメということではありませんが、相手への配慮や思いやりを欠くことにつながりかねないことを意識していただければと思います。

「察する文化」の中で生活している私たち

人は、自分の思ったことや言いたいことを相手にわかってほしいという欲求が強いにもかかわらず、多くを語らずに「わかってもらいたい」と思いがちな勝手なところがあります。しかも、わかってもらえないと裏切られたように感じてしまうのです。

話のさわり部分を聞いただけでさもわかったような(わかってもらったような)気になってしまうのは、お互いとても危険なのです。情報が少ないとそれを補うために、より一層自分本位の想像力を働かせてしまうのも問題です。

察する文化の中で生活している私たちは、相手の心を「読む」ことが暗黙のうちに期待されています。なので、詳しく聞いたりすることや、プラスアルファを説明することを恥じるという感覚も持ち合わせています。

「お前そんなこともわからないのかよ」と思われることを嫌うのです。そう思わせないために、わからなくても適当に判断してしまうということになりかねません。それが相手との行き違いをより深めてしまいます。

ですから、相手との理解を深め、自分のことをわかってもらうためには、わからないであろうということを想定し、丁寧に具体的に伝える必要があります。

ほんの一言で、トラブルが防げることはたくさんあります。ぜひ「具体的な思いやりのひとこと」を自分と相手のために付け加えるようにしてみてください。

大野 萌子 日本メンタルアップ支援機構 代表理事

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おおの もえこ / Moeko Ohno

法政大学卒。一般社団法人日本メンタルアップ支援機構(メンタルアップマネージャ資格認定機関)代表理事、産業カウンセラー、2級キャリアコンサルティング技能士。企業内健康管理室カウンセラーとしての長年の現場経験を生かした、人間関係改善に必須のコミュニケーション、ストレスマネジメントなどの分野を得意とする。現在は防衛省、文部科学省などの官公庁をはじめ、大手企業、大学、医療機関などで年間120件以上の講演・研修を行い、机上の空論ではない「生きたメンタルヘルス対策」を提供している。著書に『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑』(サンマーク出版)がある。

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