アメリカのドナルド・トランプ大統領は、10月14日放送のCBSテレビのインタビューで、ジェームズ・マティス国防長官を「民主党員のようなところがある」と評し、同長官の辞任の可能性について否定しなかった。当のマティス長官は「どの党にも与しない」と明言し、辞任の意思がないことを表明した。
しかし、マティス辞任論はくすぶり続けている。「ウォーターゲート事件」の調査報道で著名なジャーナリストのボブ・ウッドワード氏の近著で、マティス長官はトランプ大統領のことを「小学5~6年生レベル」と評したと記述され、それがきっかけで2人の不仲説が取りざたされているからだ。マティス長官は声明で完全否定している。
「解任」ではなく「肩たたき」か
トランプ大統領は前述のテレビインタビューで、マティス国防長官の去就について、トランプ氏一流の言い回しでこう述べている。「彼は政権を去るかもしれない。いずれは誰もが政権を去ることになる。ワシントンというところはそういうところだ」と。
筆者のみるところ、仮にマティス国防長官が辞任するとしても、それはレックス・ティラーソン前・国務長官のような「解任」ではなく、おそらく「肩たたき」のようなことになるのではないか。マティス氏は、前述のような悪口を言う最後の人と言うべきであり、トランプ氏とマティス氏の仲は、決して不仲とは思えないからだ。
トランプ大統領にとって、マティス国防長官辞任のダメージは途方もなく大きい。マティス氏は歴戦の強者であり、「孫子の兵法」を心得ている希有な戦略家でもある。いま軍事的に台頭してきている中国を抑え込むことができるのは、いまのところマティス氏をおいていない。貿易で中国を抑え込むことができるのも、その前提として、「兵法」を含む軍事全般で中国を抑え込むことができるかどうかにかかっている。
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