マティス国防長官にはすでに大きな実績がある。それは国際的テロリスト集団のISIS(イスラム国)を退治したことだ。このテロリスト集団を撲滅させたことは、そのテロによって大打撃を受けた中東やヨーロッパだけでなく、全アメリカおよび全世界にとって、賞賛すべき大手柄と言っても過言ではない。
ISIS掃討に発揮されたマティス国防長官の手腕、それを導いたトランプ大統領のリーダーシップ。その2人の「黄金コンビ」によって成し遂げられた功績は、まさにノーベル平和賞に値するとも言っていい。マティス国防長官は本当に辞任するのか。トランプ大統領の天才的勝負勘が試される。
ヘイリー国連大使「辞任表明」のダメージ
マティス国防長官の辞任はまだ決まったわけではないが、トランプ政権にとっては、すでにダメージの大きい辞任劇が起こっている。これまでトランプ大統領を国連の舞台で支えてきたニッキー・ヘイリー国連大使が、年末に辞任することを事前に表明したことだ。
このヘイリー国連大使の辞任表明のダメージは、中間選挙を目前にしたトランプ大統領にとって、決して小さくない。現在、女性票の支持が必ずしも強いとは言えないトランプ大統領にとって、ヘイリー国連大使の辞任によって女性票がマイナスに動く可能性があるからだ。
いったいなぜ、このタイミングでヘイリー国連大使は辞任表明をしたのか。その評価については、トランプ大統領の元側近であり、首席戦略官を務めたスティーブン・バノン氏の、次のコメントが興味深い。すなわち、「その辞任のタイミングはヘイリー氏にとってはベストだが、トランプ大統領にとっては最悪」というものだ。
政治的野心家としても知られているヘイリー氏には、いずれアメリカ副大統領以上のチャンスがめぐってくる可能性があるのに対して、トランプ大統領にとっては、女性票が逃げるリスクが高まり、それによって中間選挙で、トランプ政権を支える共和党が不利益を受ける可能性が高まるからだ。
このヘイリー国連大使の辞任、それに続く政権の重鎮マティス国防長官が辞任する可能性を含めて、ここへきてのトランプ政権内の辞任劇は、筆者の見立てでは、トランプ政権の命運にかかわり、これまでとは違う時代の大きな流れの変化が起きていることを暗示している。言い換えれば、これまでアメリカの好景気・株高を支えてきたトランプ大統領のオーラに影が差すと言うことができる。現に、ヘイリー国連大使の辞任表明があった翌日、10月10日のニューヨーク株式市場は大暴落を演じた。ダウ平均は800ポイント超も急落、翌11日も500ポイント超下落した。この世界同時株安を誘った株価暴落については、ジェローム・パウエルFRB(アメリカ連邦準備制度理事会)議長の金融政策をめぐるタカ派的な発言とか、プログラム取引の行きすぎなどが槍玉に上がっているが、ヘイリー国連大使辞任のタイミングが暗示した「大きな流れの変化」も一役買っていると、筆者は判断している。
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