アメリカのドナルド・トランプ大統領は、10月27日、インディアナ州でのスピーチで、日本車に対し「20%の関税」をかける意思表示をした。すなわち「アメリカはヤギ一匹だが、日本は何百万台という車を対米輸出している」とぶちかましたのだ。
トランプ大統領は選挙民を前にしたときには、パフォーマンスで発言することはめったにない。この発言もパフォーマンスではないだろう。ではなぜ、11月6日の中間選挙の直前、しかも期日前投票の真っ最中に、そんな「ジャパンバッシング」の発言をしたのか。
「為替の話は出ていない」と突き放したが…
そこにはトランプ大統領による、日本の安倍外交に対するイラ立ちがある。日本のメディアでは「ゴルフ外交」とも報じられる安倍晋三首相が訪米した際、トランプ大統領は、茂木敏充経済再生担当相のことを「タフ・ネゴシエーター」と聞いていると、安倍首相や記者団に向けて”牽制球”を投げていた。
茂木経済再生相は10月14日のNHK番組において、スティーブン・ムニューシン財務長官が日本との新たな通商交渉で通貨安誘導を阻止する「為替条項」の導入を要求したことに関して、「日米首脳会談や共同声明で為替の話は出ていない」と語り、為替は交渉の対象外という認識を示した。
そのうえで茂木経済再生相は、「私の交渉相手はロバート・ライトハイザー通商代表であり、日米間で為替について、必要な議論やコミュニケーションは財務大臣同士で緊密に行う」とも話し、ムニューシン財務長官が麻生太郎副首相兼財務相と協議する可能性があると述べたのである。
このメディア向け発言に、トランプ氏はカチンときたと推測できる。麻生副首相兼財務相の責任ということは、茂木経済再生相のみならず、日本側のごく自然な発想であり、メディアの間でもさして異論はない。ところが、ネゴシエーションのアーチストとされるトランプ大統領からすれば、面白くないはずだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら