安倍首相「改憲前のめり」で自公連立にきしみ

公明党の「錨(いかり)」が「怒り」に変わる時

公明党と自民党との間に修復できない亀裂は走るのか。写真は、第4次安倍内閣発足直後で、左から、公明党・斉藤鉄夫幹事長、公明党・山口代表、安倍首相、自民党・二階俊博幹事長 (写真:共同通信)

臨時国会での与野党論戦が激しさを増す中、与党・公明党の「立ち位置」が永田町の注目を集めている。安倍晋三首相は10月24日の所信表明演説や29日からの衆参両院での各党代表質問で、自衛隊明記を軸とする憲法改正実現への強い意欲を繰り返した。だが、野党だけでなく与党の公明党が慎重姿勢を変えないため、首相サイドはいらだちを隠さないのだ。

史上最長政権を視野に入れる首相にとって、憲法改正実現は自らの悲願であるとともに、政権にとっての「最大のレガシー(遺産)」ともなる。来夏の参院選での自民苦戦が予想されるだけに、首相が改憲の早期実現に向けて「前のめりになるのは当然」(側近)とされるが、政権を支えてきた公明党の存在が「越えがたい壁」となりつつある。今後の展開次第では「連立崩壊の危機」(公明幹部)にもつながりかねない状況だ。

首相は29日の衆院本会議での各党代表質問で、昨年5月に自ら提起した憲法9条に自衛隊の根拠規定を明記するいわゆる「安倍改憲」について、改めて実現への決意を強調。「今を生きる政治家の責任だ。国民のために命を賭して任務を遂行する自衛隊員の正当性の明文化、明確化は国防の根幹に関わる」と、述べた。

首相は自民党総裁3選を受けて2日に断行した党役員・内閣改造人事で、党憲法改正推進本部や衆参両院憲法審査会の主要ポストに側近議員を配置した。いわゆる「改憲シフト」で、2019年夏の参院選前の通常国会での衆参両院の改憲発議を目指す姿勢をにじませている。

「拙速な議論に反対」と野党を後押しする公明

これに対し、立憲民主党など主要野党は「安倍改憲阻止」で足並みを揃える。立憲民主党の枝野幸男代表は29日の代表質問で、「国の理想を語るものは憲法だ」との首相の所信表明での言葉を取り上げ、「憲法は首相の理想を実現する手段ではない。憲法の本質は国家権力を縛ることで、縛られる側の首相が先頭に立って旗を振るのは論外だ」と口を極めて批判した。改憲には理解を示す国民民主党の玉木雄一郎代表も、同じ代表質問で「自衛権の範囲を大幅に拡大する改憲案だ」と反対姿勢を鮮明にした。

一方、首相ら自民党首脳部が改憲での理解と協力を期待する公明党は、山口那津男代表が代表質問に先立つ地方での党会合で「発議権のある衆参憲法審査会で、まだ合意らしきものができる状況ではない。拙速な議論は避けるべきだ」と首相の前のめりの対応を批判。9月30日の公明党大会で幹事長に就任した斉藤鉄夫衆院議員も、「憲法審査会で議論を深めることに尽きる」と憲法審での各党協議に委ねるべきだとの同党の立場を、強調した。

こうした公明党の姿勢は、与党にもかかわらず主要野党の主張を後押しした格好だ。「改憲問題では、首相が前のめりになるほど、公明党が野党化する」(自民幹部)という構図にも見える。もちろん首相も所信表明では「与党、野党といった政治的立場を超え、できるだけ幅広い合意が得られると確信している。(憲法の)あるべき姿を最終的に決めるのは国民だ。制定から70年以上を経た今、私たち国会議員の責任を共に果たしていこう」と各党の協力を呼びかけるなど、憲法審重視の姿勢を強調して公明党への配慮もにじませた。

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