ポスト安倍レース、6人の混戦模様でスタート 首相の衆参選挙戦略でシナリオは変わる
安倍晋三首相が自民党総裁としての最後の任期に入ったことで、永田町では早くも、「ポスト安倍レース」がスタートした。9月の総裁選で、首相との一騎打ちで善戦した石破茂元幹事長(石破派会長、61)はもとより、今回は出馬を見送った岸田文雄政調会長(岸田派会長、61)、推薦人不足で出馬できなかった野田聖子前総務相(無派閥、58)の有力3氏が次期総裁選に向けて動き始めた。
ただ、3氏のほかに今回留任した河野太郎外相(麻生派、55)や党3役入りした加藤勝信総務会長(竹下派、62)が出馬に意欲を示す。「将来の総理・総裁確実」(自民幹部)とされる小泉進次郎氏(無派閥、37)も「2020年の東京五輪後は日本の大転換期」と状況次第では参戦の可能性をにじませている。
首相の任期は2021年9月末だが、政界には「任期前の退陣表明もありうる」との見方があり、ポスト安倍のタイミングも絡んで、自民党内の国盗り合戦は展開次第で結果も変わる混戦模様だ。
3度目の総裁選出馬で首相に連敗した石破氏だが、地方(党員・党友)票で予想を上回る「45%」を獲得したことで、現時点では「ポスト安倍の本命」と目されている。「選挙が終わった途端、次の戦いが始まる」が石破氏の持論。総裁選直後から支援を受けた国会議員や団体へのあいさつ回りを手始めに、党内の支持勢力拡大へ、活動を本格化させている。地方票では6年前の総裁選では断然トップ、今回も首相に肉薄しただけに、さらなる拡大に向け、長年続けてきた地方巡りに、一段と熱を入れる構えだ。
石破氏の弱点は総裁選で73票にとどまった国会議員票だ。今回は首相サイドの強い締め付けの結果とされるが、6年前も国会議員による決選投票で首相に逆転負けしている。3年前に立ち上げた派閥も20人のままで、「議員票の広がりに欠ける」(竹下派幹部)のは事実だ。麻生太郎副総理兼財務相は、議員票と地方票の乖離について、「近くにいる国会議員のほうがよく見ている」と指摘した。今後は「党内での"石破嫌い"の払拭」(自民長老)が最大の課題となる。
岸田氏に「戦わない男」との厳しい声
かねてから石破氏と並び立つポスト安倍候補だった岸田氏は、今回、出馬を見送って首相支持に回った。政調会長留任はその論功行賞とされ、岸田氏周辺は「結果オーライだった」と笑顔をみせる。ただ、「戦わない男」との見方の定着で、政界では「"棚ボタ"待ちの人物に国政は任せられない」(二階派幹部)との厳しい声も広がる。
ライバルの石破氏とは逆に岸田氏の弱点は地方票だ。総裁選絡みの世論調査でも岸田氏の「首相候補としての期待度」は極めて低い。このため、岸田氏は自身の地方後援会を5日に福井県で発足させ、党の政策責任者として列島各地を駆け回ることで「地方票の発掘に全力を挙げる考え」(側近)だ。その一方で岸田氏は、自らが指揮する政務調査会の政策立案能力強化のための「政調改革」にも積極的に取り組む方針だ。9日には首相に直接報告するなど政府与党内でも存在感を高めるのに必死だ。
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