ポスト安倍レース、6人の混戦模様でスタート 首相の衆参選挙戦略でシナリオは変わる

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石破氏ら6人の「ポスト安倍候補」にとっては、これが総裁選に挑む際の大きな変動要因となる。仮に、2019年夏の参院選で自民党が50議席以下の「惨敗」を喫し、首相が選挙後に退陣表明した場合は、総裁選で首相と戦い、政権とも距離を置いた石破氏が一気に本命となる可能性が高い。岸田、河野、加藤各氏は政権の中枢で「連帯責任」を負い、野田、小泉両氏も準備不足が避けられないからだ。首相の引責退陣となれば後継指名の権利もなく、党員・党友の投票が実施されなくても、今回総裁選での石破氏の「45%」が政治的重みを持つ。

次のケースは衆院選での敗北。仮に2020年秋に解散を断行し、自民党が過半数維持に失敗するか、過半数ぎりぎりの50議席前後の議席減となった場合も首相の引責辞任が想定される。そうなると、残り任期は1年を切るが、「続投しても、なにもできない完全なレームダックとなって大宰相としての面子も丸潰れになる」(首相経験者)からだ。

この場合は、退陣表明の時期にもよるが、時間的余裕があれば2021年秋の総裁選の前倒しという形で本格総裁選が実施される可能性がある。もしそうなれば、石破、岸田、野田3氏に加え河野、小泉両氏も手を挙げての大混戦の可能性もあるが、石破氏の党員・党友票の獲得実績が重みを持ち、国会議員票も地方票と連動する形で石破氏が有利になるとみられる。

一方、首相が参院選でも勝利して求心力を保ったまま、東京五輪後などに任期を残して勇退した場合は、後継指名の権利が出てくる。首相が岸田氏を指名して、安倍政権の主流派が同調すれば、岸田氏が最有力となる。

「任期満了総裁選」なら主役は小泉氏

国民の人気はやはり小泉氏に集中(撮影:尾形文繁)

さらに、首相が衆参両選挙を何とか乗り切って、大団円の任期満了となった場合、今回と同様の助走期間の長い本格総裁選となり、派閥の合従連衡などの激しい多数派工作は必至だ。その場合、「議員票の岸田」と「地方票の石破」の競り合いが想定されるが、河野氏が参戦して麻生派や無派閥の菅グループが支援すれば、石破、岸田両氏との三つ巴の混戦となる。

極め付きは小泉氏の参戦だ。現在も党内に小泉応援団は30人前後いるとされる。さらに、地方票が2000年の父・純一郎氏のときの“小泉旋風”の再来となれば、小泉氏が石破、岸田両氏らを置き去りにする可能性もある。また、小泉氏が出馬しない場合でも、小泉氏が支持する候補が圧倒的に有利となる可能性もあるだけに、2021年9月に任期満了での総裁選が行われる場合は、「主役は小泉氏」となるだろう。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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