安倍首相「消費税率10%」表明の勝算と不安 「3度目の正直」か「2度あることは3度ある」か
秋の政治の主舞台となる臨時国会(24日召集)を前に、安倍晋三首相が15日、来年10月からの消費税率10%への引き上げを予定通り実施する方針を表明した。併せて首相は、増税後の消費の冷え込みを防ぐため、「税収の半分を国民に還元する」として中小小売業での2%分のポイント還元策や、大型耐久消費財の自動車、住宅についての減税措置も打ち出した。
首相が今の時期、消費増税実施を明言したのは「まさにギリギリのタイミング」(側近)だったからだ。進行中の来年度予算編成での混乱を回避し、根強い「10%先送り論」を打ち消すことで、食料品などへ軽減税率実施の準備を加速させるためだ。ただ、政府与党内に「来年の統一地方選や参院選への悪影響は避けられない」(自民幹部)との不安が広がる一方、野党側は「この経済状況でやれるのか」(枝野幸男立憲民主党代表)などと批判し、臨時国会で徹底追及の構えだ。
「消費税10%」は民主党政権下の2012年8月に、政権党の民主党と当時は野党だった自民、公明両党との歴史的3党合意で段階的引き上げ方針が決まった。しかし、同年末の政権再交代で第2次安倍政権が発足、2014年4月に第1段階としての消費税率8%への引き上げは実施されたものの、その後に景気が落ち込んだことから、同年11月と2016年6月の2度にわたり、首相がそれぞれ衆参両院の国政選挙に絡めて先送りした。
今回の決断は「まさに3度目の正直」(政府筋)ともなる。ただ、政府与党内にも「まだ最終決定ではない」(自民幹部)との声もあり、なお「2度あることは3度」(同)との疑念は消えない。
対策の「2%ポイント還元」に多くの難所
首相は15日午後の臨時閣議で「5年半におよぶアベノミクス推進で、経済は12.2%成長した。今こそ全世代型社会保障制度へと大きく転換し、同時に財政健全化も確実に進めていく」として消費税10%実施による社会保障改革実現などのための財源確保の必要性を力説した。
2014年4月に消費税率を5%から8%に引き上げた際は、駆け込み需要の反動減もあって消費が急激に冷え込み、回復にも時間がかかったことから、首相は「あらゆる施策を総動員し、経済に影響を及ぼさないようにする」と、消費者の負担軽減策や財政出動によって景気悪化を防ぐ方針を表明した。
首相が対策の目玉としたのは、中小小売店での買い物の際、カードなどキャッシュレス決済を利用した消費者に増税分の2%をポイント還元する制度の導入だ。「一定期間」の限定付きで還元分は国が負担することになる。
さらに首相は、具体的な増税対策として、①飲食料品への軽減税率導入、②来年10月からの幼児教育・保育の無償化、③自動車保有や住宅購入に対する減税措置、④国土強靭化のための財政出動―などを打ち出した。政府与党は年末までに各施策・措置の具体案をまとめ、来年度予算案や税制改正関連法案に盛り込む方針だ。
政府にとって消費税率の2%引き上げは5兆円超の増収となる。ただ、軽減税率導入で約1兆円の減収が見込まれることに加え、幼保教育無償化などの子育て支援や社会保障充実に3兆円弱を充てるため、国の借金返済による財政健全化に使われるのは残りの1兆円強にとどまる見通しだ。
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