安倍首相「消費税率10%」表明の勝算と不安 「3度目の正直」か「2度あることは3度ある」か

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首相の決断に対し、岸田文雄自民党政調会長は「全世代型の社会保障や財政再建への取り組みは歓迎すべきことだ」と評価した。また、公明党の石田祝稔政調会長も「やらざるをえない」と首相を後押しした。

一方、野党側は枝野立憲民主代表がここにきて起きた世界同時株安も念頭に「過去2回、景気を理由に(増税を)先送りしたこととの整合性がとれない」と首相の対応を批判し、財務省出身の玉木雄一郎国民民主代表も、軽減税率導入について「混乱が生じ、税収に穴があく」と指摘した。さらに、共産党の小池晃書記局長は「格差拡大に拍車をかける。『社会保障のため』といういい方は国民を愚弄している」と酷評した。

首相ら政府与党首脳が懸念したのは、軽減税率導入に対する小売店のレジ改修などの準備の遅れだ。日本商工会議所が9月28日に発表した調査結果では、準備を始めていない中小企業は約8割となっている。改修が間に合わなければ増税時に小売業界で大混乱を招き、社会不安にもつながりかねないからだ。

ただ、首相が過去に2度、増税を先送りしたことで、「今回も先送りするのではとの疑念で準備が遅れた」(財界首脳)ことも否定できない。政界では「オオカミ少年のような首相の対応が原因」(共産党幹部)との指摘もあるだけに、臨時国会などでも「増税をめぐる首相の過去の言動」」が厳しく問われる場面も想定される。

さらに、軽減税率導入に伴う社会的混乱も不安材料だ。対象となる飲食料品の「線引き」や、「イートイン」と呼ばれるコンビニなどでの店内飲食と持ち帰りに対する課税率の違いなどで、店舗と消費者の双方が混乱することは避けられそうもない。さらに、ポイント還元分の国庫負担の対象となる中小小売店と、負担がない大規模店との”差別”も「政治問題」となる可能性が大きい。

しかも、生活弱者が多い高齢者層はクレジットカードや電子マネー、スマートフォンの保有率が低いため、恩恵にあずかれないことも問題で、政府の有効な救済策制度化にも困難が伴う。やり方次第では「バラマキ」「不公平」との批判が巻き起こりかねないからだ。

自民党の参院改選組にはダブルパンチ

その一方で、政府与党内では来年の統一地方選や参院選への影響を懸念する声も強まっている。首相サイドは「参院選への悪影響を避けるため、早めに決断した」(政府筋)と強調するが、今後、国民の間では軽減税率をめぐる混乱への不安や疑念が日を追って拡大することは避けられず、「選挙が近づくほど、国民の不満や批判が高まって、野党を利する結果になりかねない」(公明幹部)という側面もあるからだ。

特に、統一地方選と参院選が重なる12年に1度の「亥年(いどし)選挙」は、地方組織の疲弊などから参院選で自民党が苦戦するケースが多いだけに、同党の来年改選組は「政府の対応が混乱すれば悪影響は必至」(有力議員)と不安を隠さない。しかも、首相が来年通常国会で憲法改正に突き進む事態となれば、「国民の反発が自民党候補へのダブルパンチとなる」(同)ことも想定される。

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