安倍首相「消費税率10%」表明の勝算と不安 「3度目の正直」か「2度あることは3度ある」か
首相は消費税率10%実施に関する臨時閣議での発言で「法律で定められたとおり、2019年10月1日に現行の8%から10%に2%引き上げる“予定”だ」との表現を使った。これについて首相サイドは「経済は何が起こるか分からないから、留保が必要だ」と説明し、臨時閣議後の記者会見で最終判断の時期を問われた菅義偉官房長官も「状況を見ながら(首相が)判断する」と含みを持たせた。
これまで、増税に関する決断の際は、自ら記者会見などで国民に説明してきた首相が、今回は閣議での発言内容を文書で公表するにとどめたことも、自民党内などに「首相はなお、様子を見るつもりだ」(閣僚経験者)との憶測を呼んだ。政府部内からも「今回、閣議での首相指示という形式にとどめたのは、やはり意味があるはず」(政府筋)との声がもれてくる。
もちろん、来年10月からの増税による増収分は現在進行中の来年度予算編成の大前提となっており、年末の政府予算案閣議決定で「手続き的にはもう後戻りは不可能」(政府筋)というのが霞が関の常識ではある。しかし、先週、「世界同時株安」といった国際金融市場の混乱が広がったように、「世界経済は流動的で、いつ何が起こるか分からない」(財界首脳)ことは事実だ。
とくに、アメリカのドナルド・トランプ大統領が仕掛けた「米中貿易戦争」の展開次第では、日本経済が深刻な打撃を受ける可能性も少なくない。しかも、11月6日の米中間選挙でトランプ政権を支える共和党が下院で敗北すれば、大統領の求心力低下が世界経済の混乱にもつながりかねず、これから始まる日米貿易交渉が迷走する事態も想定される。
くすぶる増税延期と衆参同日選の思惑
だからこそ政府与党内にも「来年の通常国会が始まった段階で、首相が増税延期に心変わりする可能性はまだ残っている」(閣僚経験者)との見方が根強いのだ。首相サイドのいわゆるリフレ派(インフレ促進政策を支持する人々)の間でも「来年3月までに首相が3度目の増税延期を決断し、通常国会会期末に衆院解散による衆参同日選で乾坤一擲の勝負に出る」(有力議員)との期待がある。
もちろん、与党内には「そんなことをすれば、来年度予算は組み直しとなり、国会審議は大混乱して、天皇退位・新天皇即位という歴史的皇室行事にも影響が出るため、首相の責任も厳しく問われる」(自民長老)との見方が支配的だ。政治的にみても“もり・かけ疑惑”での不明朗な説明で生じた「ウソつき首相」批判がさらに拡大して「政権の命取り」(同)にもなりかねない。
永田町にそうした喧騒を残して、首相は16日午前、スペイン、フランス、ベルギーの欧州3カ国歴訪のため、昭恵夫人とともに羽田空港から飛び立った。得意の「安倍外交」での政権浮揚を狙う構えで、表情にも今回の決断への自信と満足感をにじませていた。ただ、「政界の一寸先は闇」との先人政治家の格言もあるだけに、「増税実施決断が、吉と出るか凶と出るかは、首相自身にも分からないというのが実態」(首相経験者)だ。
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