ここで問題なのは、ボルトン補佐官が国際安全保障問題のエキスパートだとしても、エネルギー問題の専門家ではないことだ。今回の米ロ対立の背景には、ヨーロッパに対するロシアのエネルギー攻勢と、アメリカがエネルギーの輸出大国である事実という、エネルギーの巨大市場における競合が根底にあることは間違いない。
そんな状況下、プーチン大統領と会うかどうか、トランプ大統領自身が明言を避けているというのに、ロシア滞在中のボルトン補佐官は「今後、米ロ首脳会談が行われるかどうかは、プーチン大統領の意向次第」と述べたのだ。ボルトン補佐官によって、プーチン大統領との会談を丸投げされた格好のトランプ大統領にとっては、とんでもない話である。
トランプ大統領にしてみれば、フィンランドにおける米ロ首脳会談直後の記者会見で、欧米のネットが大炎上、支持率低下が一時的に懸念されたが、そのような厄介な問題を再び抱え込むことになりかねない。対プーチン大統領との交渉術はトランプ大統領も心得ているだろうが、よりハイリスクなのは、ボルトン氏から丸投げされた格好の今後の米ロ首脳会談直後の記者会見がどうなるかである。つまり、「反トランプ」メディアとの戦いを事実上、繰り返さざるを得なくなるということだ。
民主党でくすぶるトランプ弾劾の動き
「反トランプ」メディアのフェイクニュース同様にトランプ大統領を苛立たせるのは、民主党のテキサス州下院議員ベト・オルーク氏の存在だ。彼は、2016年大統領選で、トランプ氏と共和員最終候補の座をめぐって戦ったテッド・クルーズ上院議員と今、テキサス州上院議員への座をめぐって激しく競っている。
このオルーク議員は、フィンランドでのトランプ・プーチン会談、その後の記者会見を猛烈に批判し、そのことを理由にトランプ大統領の弾劾を主張してきた人物だ。今、トランプ大統領は、かつてのライバルであるクルーズ議員の応援に回っている。
結果として世論調査では、オルーク議員に追いつかれそうになっていたクルーズ議員が、ここへきて世論調査で5%の差をつけられていると報じられた。トランプ大統領の人気、集票力の強さを示すものだと言えるよう。
ただ、メディア・リスクのほうは、そう簡単にいかない。トランプ大統領は今後、ロシアとの首脳会談のたびに、アメリカ人記者団の前で、再びフィンランド会談での轍を踏まないという保証がないからだ。さらに、第2、第3のオルーク議員が、民主党側に誕生してこないとも限らない。トランプ氏にとって、米ロ首脳会談の行方は、鬼門と言ってもいい。
そうした状況の中、安倍首相は中国の習近平国家主席と会談し、日本のメディアは「日中接近」とはやしたてている。さらに、トランプ大統領も訪ねたことのない安倍首相の別荘に海外首脳で初めて、インドのナレンドラ・モディ首相を招待した。日本のメディアは、これを「別荘外交」と評している。
安倍首相の得意な「ゴルフ外交」にしても、トランプ大統領によるジャパンバッシングから防御するような、蜜月時代を演出する効果は薄れてきたのかもしれない。
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