まるで民主党員?マティスは辞任するのか 政権内でトランプ大統領は孤立している

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そんな折も折、CNNが2020年大統領選の民主党候補者のランキングを発表した。トップはジョー・バイデン前副大統領、第2位は前回の大統領選で善戦したバーニー・サンダース上院議員だが、注目すべきは、第3位にカマラ・ハリス上院議員が登場したことだ。

ハリス氏はカリフォルニア州司法長官を6年間務め、刑事司法改革など数々の実績を上げ、上院議員に当選した。彼女は同州の法秩序を守る地位についた初の女性であり、初のアフリカ系アメリカ人、初のインド系アメリカ人として有名だ。

バラク・オバマ前・大統領とも親しく、彼女が州の司法長官時代にオバマ氏は彼女を「アメリカ中で、抜群に、最も美しい、州の司法長官」と称賛。その後、その発言について謝罪声明を出し一躍、彼女の全米メディアでの知名度を高めた。

彼女は民主党の希望の星と評され、ヒラリー・クリントン氏が前回選挙でトランプ氏に敗れたあと、初の女性大統領と目されている。それに対抗する形で共和党候補として出馬する可能性があるのが、今回、国連大使辞任を表明したヘイリー氏という観測もあった。ただ、そのヘイリー氏は2020年大統領選では、トランプ大統領を支持すると明言した。

メラニア夫人以外に助ける人がいない?

ともかく、ヘイリー国連大使の辞任表明は、トランプ大統領にとって、決していいタイミングではない。仮にマティス国防長官の辞任が加われば、トランプ大統領の政権内の孤独はますます深まることになる。

「天才は孤独を愛す」というが、一部に「天才」呼ばわりされているトランプ大統領は、果たして自ら招いた「トランプの孤独」に耐えられるのか。いかに天才的だとしても、政権内でトランプ氏を本当に理解する人、助ける人がいるのかどうか。

ヘイリー氏に代わる人物としては、イバンカ大統領補佐官が国連大使として候補に上がっている。彼女は平昌オリンピックにもアメリカ代表として列席するなど、外交的な国際経験もあり、夫のジャレット・クシュナー氏は中東の専門家でもある。同氏は、最近、メキシコとの貿易協定をまとめるなど外交実績もある。この2人が協力して外交戦略を練り、トランプ大統領を助けるチームになる可能性はある。

ただ、イバンカ氏が国連大使になると、どうしてもニューヨークの国連本部中心に国際的な活躍をすることになり、トランプ大統領をホワイトハウスで側近として、身近に助けることはできない。となると、それができるのは、唯一、メラニア夫人ということになる。彼女はその役割を演じることができるのか。

筆者は十分できると思っている。10月上旬、メラニア夫人はファーストレディとしての初の単独外遊で、ガーナ、マラウイ、ケニア、エジプトのアフリカ4カ国を歴訪した。10月15日にはトランプ大統領とともに、怪物ハリケーン「マイケル」で被災したフロリダ州を視察している。

そのファーストレディとしての役割は、今後もいかんなく発揮されるだろう。彼女はトランプ氏が政権内で孤立していること、裏切り者がいること、いじめにあっていることを熟知している。そのうえで、「夫は誰よりも国のために働いている」と明言し、全面的にサポートしている。メラニア夫人は宗教心に厚く、2016年大統領選では、選挙戦が最終段階に近づけば近づくほど、その実力を遺憾なく発揮した。

かくして、トランプ政権内では、メラニア夫人以外にトランプ大統領を助ける人がいないかのような厳しい状況だが、この「トランプの孤独」をどう切り抜けるのか。これからのトランプ大統領の臨機応変な立ち居振る舞いが見物である。

「ドナルド・シンゾー」の関係にある安倍晋三首相としても、この「トランプの孤独」を座視するわけにはいかない。中国の習近平国家主席やロシアのウラジミール・プーチン大統領への対応をめぐって、「トランプの孤独」に塩を塗るような、下手なまねをすると、日本を狙った「為替条項」のような返り討ちに会う危険性もあり、十分、注意してかかる必要がある。

湯浅 卓 米国弁護士

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ゆあさ たかし / Takashi Yuasa

米国弁護士(ニューヨーク州、ワシントンD.C.)の資格を持つ。東大法学部卒業後、UCLA、コロンビア、ハーバードの各ロースクールに学ぶ。ロックフェラーセンターの三菱地所への売却案件(1989年)では、ロックフェラーグループのアドバイザーの中軸として活躍した。映画評論家、学術分野での寄付普及などでも活躍。桃山学院大学客員教授。

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