9月中旬から日本株が大きく上昇、10月1日には日経平均株価は終値ベースで27年ぶりの高値となった。また為替市場でドル円相場は、9月初旬までの1ドル=110円付近での膠着状態から脱し、一時114円台と2017年11月以来の水準までドル高円安が進んだ。
根拠が定かではなかった円高懸念
このように、夏場まで停滞していた日本の金融市場は本格的な秋の訪れとともに再び盛り上がりつつある。だが27年ぶりの日本株の高値更新といっても、TOPIX(東証株価指数)でみれば年初来の水準まで戻ったにすぎない。2018年初来からのリターンを海外株と比較すれば、アメリカ株は約10%上昇、日欧株はいずれもわずかなプラスリターンで日本よりも政治情勢が不安定にみえる欧州とほぼ同じにすぎない。そして、年初来リターンがマイナスである新興国株よりはまし、という状況である。
9月初旬までリスクに警戒的になっていた日本株が、大きく上昇したことにはいくつか理由がある。1つは、日米通商交渉において、アメリカから自動車関税の引き上げを強く要求されるリスクが後退したことだろう。
米中貿易摩擦への懸念から中国などアジア株が低調だが、海外投資家からみて日本株も一時同様に位置づけられていたのかもしれない。だが日米と米中を取り巻く政治状況は異なり、9月末に行われた日米通商交渉においてもアメリカの態度は、中国への厳しい対応と比べると穏当だった。
安倍政権が長期化して、ドナルド・トランプ大統領と良好な関係を保てているという外交政策の成果もあるが、そもそもアメリカの通商政策が対中国とそれ以外ではまったく異なる政治情勢を踏まえれば、十分想定できた展開だろう。日本では1990年代までアメリカ政府からの圧力で円高を強いられたトラウマが大きく、「根拠が定かではない円高懸念」の反動がこの9月にも大きく表れたのかもしれない。
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