とはいえ、何よりもアメリカ株の堅調な上昇が続いていることが、日本株上昇の最大の要因だろう。9月のアメリカ株市場はネットサービスの規制強化などの悪材料でハイテク株の上値が重くなる場面があったが、景気回復や業績改善期待を背景に、主要株価指数は最高値を更新するなど堅調だった。アメリカ株は一足早く8月後半に1月末の最高値を更新していたが、米中間の通商交渉の材料で上下する中で、トランプ政権が提示する中国への関税引き上げは、少なくともアメリカ経済にとって大きなダメージに至らないとの認識が、一足早く広がっていた。
夏場にアメリカ株が上昇していた時点では、アメリカ株投資家の市場心理は、ほかの金融市場との対比で最も楽観的に位置づけられた。その後9月になると、株高に遅れる格好で、アメリカ債券市場では月末まで金利上昇が続いた。アメリカの雇用統計による賃金上昇などが材料になったが、それに加えて米中通商摩擦などが経済に及ぼす悪影響が債券市場で警戒されていたが、それが薄らいだこともあっただろう。
9月にアメリカ株は再び最高値を更新したといっても、利益確定売りにも押されながらわずかなプラスにとどまった。一方で、9月のアメリカの債券市場では月末のFOMC(米連邦公開市場委員会)の前に金利上昇が続き月間ベースでは約+20bpsの金利上昇となり、10月初旬にはさらに上昇した。8月まで慎重だったアメリカの債券市場の市場心理が、一足早く強気方向に転じていた国株市場の心理に近づき、アメリカ10年金利は2011年以来の3.2%台まで急上昇した。
アメリカの関税引き上げの悪影響はどの程度なのか?
関税引き上げは貿易や経済活動に悪影響を及ぼすものの、それがどの程度経済全体に影響を及ぼすかについては不確実性が大きい。こうした思惑で春先から金融市場は揺れ動いてきた。
実際には、7月のIMF(国際通貨基金)のペーパー”G-20 SURVEILLANCE NOTE”によれば、現在発動されているアメリカから中国への2000億ドル規模の関税引き上げなどが、世界のGDP成長率に及ぼす影響は今後3~4年で0.1%程度と示されている。関税引き上げが企業や金融市場のコンフィデンスに影響を及ぼさないという前提の楽観的な試算ではあるが、アメリカ株・債券市場ではこれに近い見方が広がっていたと思われる。関税引き上げがあっても、財政金融政策の判断ミスがなければこうした試算にも十分な説得力があると筆者はみている。
このように、アメリカの債券市場での金利上昇は9月初旬から始まったが、加えて、9月中旬からドル円がやや円安に動いたことで、夏場まで停滞していた日本株の大幅高をもたらした。先行して上昇していたアメリカ株に追いつく格好で、アメリカ債券市場の心理が動き、その後押しでドル円と日本株がそれぞれ上昇した。9月前半は、アメリカ金利が上昇する中で、日本株が停滞していた時期があったが、押し目買いの絶好の機会だったといえるだろう。
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