アメリカのニューヨークダウ平均株価は、10月10、11日の両日で約5%もの急落となった。下落当日に目立った悪材料がでたわけではなく、アメリカ株下落の直接のきっかけを特定するのは難しい。だが今年2月初旬のように、同国の長期金利上昇が時間差を伴って株価下落を引き起こした、というのが最も説得力があると筆者は考えている。
今回のアメリカ株下落は2月の再現か、景気後退の兆候か
9月末までの株高でPER(株価収益率)が高まり、株式投資によって得られる期待利回りが低下していたところに、アメリカでは9月初旬から長期金利の上昇が続いた。長期金利が3.2%前後まで上昇し債券投資の投資魅力が高まれば、価格変動リスクが大きい株式への投資魅力は相対的に低くなる。2月にアメリカ株の急落が起きたときにも、やはり長期金利が3%を超えて上昇し、相対的な株式投資への魅力低下が大きな要因になっていた。
また、アメリカ株の下落幅を大きくした要因として、米中関係の緊張関係が強まっていることがある。実際に、アメリカ企業の決算シーズンを控え、中国要因で業績の下方修正を事前に伝える企業が散見された。
いくつか悪材料が重なったことが、金利上昇によって投資魅力が低くなっていたアメリカ株の急落を後押ししたとみられる。
ではアメリカ株式市場の急落は何を意味するのか? もし、金利上昇によって株価が急落した2月と同様であれば、しばらく安値水準で推移した後、再び上昇することになる。一方、株式市場は景気変動の先行指数としての役割を果たす場合がある。前回の2月とは異なり、今回の急落がアメリカ経済のピークアウトや景気後退の始まりを意味するのなら、下落相場の基点ということになる。
もし後者のリスクシナリオが実現する場合は、今後アメリカ経済や企業業績が大きく減速することになる。その経路としては、①金利上昇による株価の暴落、②貿易戦争による企業活動の停滞、の2つが挙げられるだろう。
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