株急落よりも怖い新興国のドル建て債務

ドル高・ドル金利上昇で返済が苦しくなる

NYダウの下げが意味するものを考えたい(写真:REUTERS/Brendan McDermid)

10月も半ばにさしかかろうとしたところ、ニューヨーク・ダウ平均株価の急落を発端として世界の株価が一斉に値を下げた。震源のニューヨーク・ダウ平均株価に至っては2日間(10月10日・11日)で1400ドル弱という大きな下げ幅となった。

下げの契機となった材料は特になく、その点を不可解に感じる向きもあるようだ。だが、そもそも米中貿易摩擦、FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げが中立金利(景気を熱しも冷ましもしない金利水準)を超えるシナリオになってきたこと、新興国からの資本流出、イタリア政局不安、ブレグジット(英国のEU離脱)の混迷など、株売り材料が満載であるにもかかわらず、株価も金利も上がってきたというこれまでの状況が不可思議だった、というのが筆者の基本認識である。

さらに悪いことに、このところ金融政策への不満を漏らし続けているアメリカのドナルド・トランプ大統領が、この株安に乗じてFRB批判を先鋭化させており、株価急落は「FRBが狂った(The Fed has gone crazy)」ことに原因があると言明している。トランプ氏は利上げに関し「必要ないというのが私の意見だ。私のほうが彼らよりこの点を分かっている」と述べている。

ここには1つ、解釈のズレがあるかもしれない。これまでのFRBの情報発信を見るかぎり、利上げやバランスシートの縮小には金融システムの安定(≒バブルの抑制)を企図した部分も含まれている。ということは、株を含む資産価格の調整は覚悟の上である。この「分かってやっているFRB」と「分かっていないと思っている大統領」の溝はおそらく埋めがたい。

ドル高・ドル金利高がもたらす本当の問題

この動きが「一時的なショック」にとどまるのか、「本格的な調整の始まり」なのかは、現時点では定かではない。ただ、冒頭で述べたように、これまでの状況に無理があったのは確かなのだから、少なくとも「本格的な調整でも不思議ではない」という心構えが必要である。利上げの目的は消費・投資の引き締めであり、その効果は遅かれ早かれ必ず現れることを今一度認識したい。

また、ドル金利とドルの相互連関的な上昇が続くことで不安視されるのは、株価に代表される市況の話だけではない。FRBの政策金利であるFF(Federal Fund)金利は、さしずめ世界の資本コストを規定する存在である。ゆえに、ドル金利上昇はアメリカ以外の国の経済・金融活動も制御する力を持つ。

だからこそ、近年の国際決済銀行(BIS)の報告書などでは「アメリカ以外で膨張したドル建て与信」がテーマになっているのである。ドル金利やドルが上昇すれば外貨としてドルを借り入れた主体は借り換え時に窮するという当然の話だ。

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